建築および都市の防災向上へむけての課題

−阪神・淡路大震災に鑑みて−

(第一次提言)



1995年7月19日



社団法人 日本建築学会 兵庫県南部地震特別研究委員会



まえがき

 去る1月17日に発生した兵庫県南部地震は,阪神・淡路地域の建築物等に倒壊,火災等の甚大なる被害をもたらし,多数の死傷者,被災者を出し,更には都市機能を長期間にわたり麻痺させるに至った。特に多数の死傷者が家屋等の倒壊により生じ,直後に発生した火災がその惨事を拡大するに至り,我が国における戦後最大の震災となった。

 建築および都市に関する学術・技術・芸術の進歩発展をはかることを目的とし,安全で安心して住み続けられる建築と街づくりの一翼を担ってきた日本建築学会(以下,本会)では,この惨事を極めて重大かつ深刻に受けとめ,地震発生直後より災害の学術的調査・分析・研究および復旧支援活動に取り組み,第一次調査報告の刊行,緊急報告会の開催などを行ってきた。

 今回の災害を踏まえて本会に新たに設置された兵庫県南部地震特別研究委員会(以下,本委員会)においては,各分野の常置調査研究委員会等と緊密な連絡をとりつつ,震災の分析ならびに専門分野を超えた横断的かつ緊急に取り組むべき課題の検討を行ってきた。

 その結果,「地震災害の防止あるいは軽減のためには,個々の建築物等の耐震化をはかることが基本であることは言うまでもないが,今回の災害を通じて浮き彫りになった問題点は,都市あるいは地域としての総合的な防災計画および人間中心・生活重視の視点からの防災計画の欠如であり,建築および都市に関する広範囲の分野の研究者,技術者等より構成されている本会においては,学際的・横断的見地よりこれらの問題に取り組むべきである」との認識のもとに,本委員会にて直接とり上げるべき特定研究課題として次の7課題を選定し研究を開始した。

 1.強震記録と設計用地震動との関係

 2.耐震設計に要求される安全のレベル

 3.既存不適格建物の改善方策

 4.木造密集市街地の防災まちづくり方策

 5.災害時の対応行動と避難に関する計画のあり方

 6.復旧・復興計画のあり方

 7.歴史・文化・景観の保全と再生のあり方

 しかしながら,これらは解決すべき課題のすべてを網羅しているわけではない。
 そこで,本会として総合的に検討すべき課題ならびに提言すべき項目についての検討を各常置委員会等からの意見聴取結果に基づいて行った。
 本資料はそれらの結果を,上記の7特定研究課題をも含めて以下の5項目に整理して示したものである。その多くは本会が自ら積極的に研究すべき課題であるが,同時に,行政をはじめとする各方面への提言事項も多く含んでいる。そこで,これを本委員会の「第一次提言」として公表するものである。

 A.災害に強い都市づくりの推進

 B.既存不適格建物の耐震対策

 C.耐震性能を明確化した設計法の開発

 D.災害情報システムの確立

 E.地震災害の防止・軽減に関する基礎的研究の振興

 なお,今回の提言は主として検討すべき項目を総括的に指摘したもので,具体的な課題および提言については今後の検討状況に応じて随時公表してゆく所存である。



A.災害に強い都市づくりの推進

 今回の兵庫県南部地震は,多くの建築物を倒壊・焼失させ,また様々な側面で都市機能を麻痺させて都市生活とその場を破壊し,あらためて都市の耐震化・不燃化を基本とした「災害に強い都市づくり」の重要性を提示した。また,貴重な文化資産をはじめ,日常生活に潤いとアイデンティティを与えていた多くの生活資産をも失わせ,都市のあり方に問題を投げかけた。
 これらの被害の発生を教訓として,被災都市の復旧・復興にあたってはもちろん,これからの都市づくりでは,市民が安心して快適に住み続けられる,安全でアメニティ豊かなゆとりある都市づくりを目指して,より一層の都市構造の強化と,地区特性に応じた防災性能の向上に努めるとともに,あわせて市民が誇りとする文化的資産の保全と再生をも推進する必要がある。

A.1 都市構造の防災化

 災害に強い都市づくりには,建築物および都市基盤施設の耐震化・不燃化を基本に置きながら,自然地形等の空間基盤に対応した防災計画が必要である。このためには適切な土地利用と空間利用密度の強力な制御が必要であると同時に,都市の骨格となる交通・輸送施設を,陸路のみならず水路と空路をも含めたシステムとして強化・整備することが重要である。
 交通・輸送施設の強化・整備は,災害時における救急・救援活動,火災延焼や津波からの避難に重要であるだけでなく,情報伝達の確保の上からも不可欠な課題であることはいうまでもない。
 これらに加えて,さらに都市構造の防災強化をはかるためには,公園緑地や生産緑地の整備・活用を進めるとともに河川等のオープンスペースをも含めた防災緩衝帯を形成し,それらによって都市空間の適切な分節化とシステム化を実現する必要がある。
 これらを要約すれば次のとおりである。

 1)自然地形・地盤等の空間基盤に応じた適切な土地利用の推進

 2)都市の骨格となる交通・輸送施設網の強化・整備

 3)オープンスペースの防災緩衝機能の評価と整備

 4)都市空間の分節化による空間システムの構築

A.2 自立的な防災市街地空間の形成

 都市レベルでの都市構造の防災強化とあわせて,地区レベルでの特性に応じた防災性能の向上は,「災害に強い都市づくり」に不可欠のことがらである。
 そのため,災害教育の推進・普及はもとより,地区住民による自主防災組織の育成と活動の強化による「災害に強いコミュニティづくり」が必要となる。それは,ひいては被災地の住民参加による復旧・復興まちづくりを実現することにつながる重要な基礎となるものである。
 一方,施設整備の側面では,コミュニティ施設に都市の一元的ライフラインをバックアップする役割をもつ分散型・自立型供給施設を整備して緊急時の水や電力等の確保を図ることが是非とも必要であり,併せて処理施設をも適切に整備しなければならない。
 また,避難路となる歩行者空間では,ブロック塀や擁壁等の倒壊・崩落,あるいは落下物による被災の危険を予防し,安心して歩け,移動できる空間を確保しなければならない。
 それらの総合的整備のためには,必要に応じて街区単位での安全整備事業として推進する公的体制・制度の確立が望まれる。
 これらを要約すれば次のとおりである。

 1)災害に強いコミュニティの育成

 2)コミュニティ施設への分散型・自立型供給処理施設の整備

 3)避難路となる歩行者空間の安全性の確保

 4)安全街区を整備する事業制度の創設

A.3 木造密集市街地の改善

 わが国の都市においては,住区レベルでの街路整備水準が低く,消防・救急活動も困難な地区が少なくない。そうした地区は,同時に老朽木造家屋が未更新のまま残存し,密集市街地を形成して,災害の危険性の高い地区であることが多い。
 このような現状を今回の震災とあわせて考えると,自立的な防災市街地の形成にあたって,木造密集市街地については一定の広がりの地区範囲において,防災上最も期待すべき街路を防災街路とし,その幅員を確保するとともに,その街路に面して地区消防施設はもちろん,小公園等の防災空地や防災活動にも寄与する公共施設を配置し,さらに沿道建築物の耐震性の向上,不燃化を促進する等,防災街路整備を中心とした地区の改善・再生を推進する必要がある。そのため,単なる街路整備ではなく,防災施設として総合化した防災施設街路として整備することが肝要である。
 木造密集市街地の防災性能の強化の実現にあたっては,これとあわせて,共同・協調建替事業の促進を支援する公的制度が,モデル事業制度としてでも創設されることが望まれる。
 これらを要約すれば次のとおりである。

 1)住区防災施設街路を整備する事業制度の創設

 2)共同・協調建替え事業の推進

A.4 防災・避難施設の整備と応急臨時住宅の供給の多様化

 今回の災害における防災活動等の実態をみると,災害時における応急対応のための活動拠点,すなわち市役所,警察署や病院等に加えて,各都市が必要と判断して指定する学校をも含めた諸施設を防災重要拠点施設として整備・配置し活用することの必要性が明らかである。
 また,あらゆる公共・公益施設が避難場所となり,かつそれらのほとんどが避難所として利用されたことから,防災重要拠点施設指定以外の学校施設等についても,他の公共施設等とともにコミュニティ施設と位置づけられるものについては,避難所としての機能を付加し,情報や支援活動,人的交流等のためのネットワーク整備とともに適切な整備・配置を推進する必要がある。
 一方,避難所から応急仮設住宅等臨時住宅への被災者の円滑な早期移転の実現は,被災者の健康・生命の維持から生活再建にとって重要な課題であると同時に,避難所として利用された公共施設本来の役割を果たすためにも必要不可欠のことがらである。そのため,応急仮設住宅や一時使用住宅等の公的供給のみならず,民間供給や自力建設への支援をも含めて地域対応型供給の迅速な拡大体制・制度を確立する必要がある。
 ここで重要なことは,供給される臨時住宅が,高齢者や障害を持つ人々に対してバリアフリー住宅でなければならないということである。臨時住宅の供給にあたっては,とくに応急仮設住宅等公的施設の質を,この面で確保することが不可欠な要件となる。
 これらを要約すれば次のとおりである。

 1)市役所,警察署,消防署,指定学校等の防災重要拠点施設としての総合的整備・配置の促進

 2)学校および地区集会所,公園等のコミュニティ施設への避難所機能の付加による整備と適切な配置の推進

 3)応急仮設住宅等,臨時住宅の地域対応中心での多様な供給体制・制度の確立

 4)バリアフリーの応急仮設住宅の適切な立地選定と供給の推進

A.5 歴史的建造物等の文化的資産の保全と再生

 今回の震災では,地震災害が貴重な文化資産としての建造物や伝統的街並み等にも多大な被害を及ぼすことを実証した。被災文化財の修復・再生の推進は,文化的資産の保全や災害予防の推進とともに重要な課題である。
 また,文化財指定を受けていない,多くの貴重な「生きている文化・文化資産」としての日常的生活景観も被災し失われた。日常的生活景観は,地域の人々の生活に潤いと地域認識の基底(アイデンティティ)を与えていたものであり,その修復・再生もまた街づくりに欠かすことができない。
 国指定の歴史的建造物は当然のことであるが,地方公共団体指定の歴史的建造物,さらには地域の特性を形成する日常的生活景観に至るまでの文化的資産を体系づけて,修復・再生し,街づくりの中に生かしていくとともに,それらの耐震性能向上のための研究の推進による対策の早期確立が必要である。
 これらを要約すれば次のとおりである。

 1)歴史的建造物の耐震性能向上のための研究の推進と対策の確立

 2)指定文化財以外の日常的な生きている文化財・文化遺産の分布状況とそれらの特質の把握

 3)地域の特性を形成する日常的生活景観の再生・保全のための支援体制・制度の創設



B.既存不適格建物の耐震対策

 過去の災害の苦い教訓とそれを受けた研究に基づき構造基・規準は幾度となく改められ,その実効を期すために建築基準法の耐震設計体系もそのつど改訂されてきた。しかしながら,今回の地震で倒壊などの深刻な被害を受けた建物の多くは,構造基準改正以前のいわゆる既存不適格建物のうち,建設当初より当時の基準が要求していた耐震性のレベルに対して余力の少ないものであった。老朽化あるいは不適切な施工による性能の劣化・低下がこれに重なり激しい被害を受けた建物も多くみられた。
 近年,既存不適格の公共建物については耐震診断ならびに耐震補強等の対策が開始され,民間の建物にも推奨されていたところであった。しかし,大規模な修繕等の法的な申請が必要な場合を除いて,法が既存のものに遡っては適用されないため実効が少なく,多くの既存不適格建物が放置されてきた。
 また,被災した既存不適格建物の大規模な修復あるいは建替えに際しては,容積率等構造基準以外の規定の改正により再建が困難であるという問題点も生じており,これは今回の被災地以外の建物の耐震補強を含む大規模修繕を困難にしている要因の一つでもある。
 既存不適格建物の耐震対策を促進することは今回の惨事を繰り返さないための焦眉の課題であり,そのためには以下のことが必要である。

B.1 既存不適格建物の耐震性向上等の改善の推進

 改善の契機のない既存建物,建て直す以外には現行の構造基準を法的には満足できない建物,および耐震化が不備な設備機器の安全をはかるための実質的な改善を促進するためには,その必要性の啓蒙,技術者の育成,診断・補強方法の開発,およびそれを法的,行政的に誘導する方策が必要である。

 1)既存建物改善の必要性の啓蒙と技術者育成の促進

 2)既存建物および設備機器の診断と改造・補強・補修技術の開発と標準化

 3)被災した既存不適格建物の補強・補修方策の策定

 4)防災計画上重要とみなされる既存建物の耐震性の向上

 5)耐震診断,補強のための補助金,低利融資,税制優遇等の制度の充実

B.2 既存不適格被災建物の再建・復旧方策の明確化

 被災建物で,補修・補強を伴う大規模な修繕ないし建て替えが必要であるにもかかわらず,容積率等の集団規定上の既存不適格建物であるために,既存建物と同等規模のものが建設できず,その再建がやむを得ず先送りされる事態が生じている。
 また,建物の形態上,防火・避難等の規定に適合させることができないため,復旧に困難をきたしているものも少なくない。
 都市の耐震性向上・不燃化のためにも,これらの被災建物の再建・復旧方策についての法制上の早期の明確化が必要である。

 1)容積率等集団規定上の既存不適格被災建物の再建方策についての法制上の明確化

 2)法的な適格化の有無にかかわらず,実質的に防火・避難上の安全性を高める方策の検討および法的な取扱いの見直し



C.耐震性能を明確化した設計法の開発

 今回の地震による建物の被害を見ると,現行の耐震設計体系には一応の評価がなされたと考えられる。しかしながら,現行の耐震設計法採用以降に建設された建物にも予測を超えた大きい被害を生じたものがあった。それらの主なものは,剛性,強度のアンバランスにより1階に大きな変位が集中した,いわゆるピロティ構造の鉄筋コンクリート造建物,溶接部あるいはその周辺に脆性破壊の生じた鉄骨造建物,杭に損傷の生じた建物等である。また,構造的には重要な損傷ではないが,非構造材の修理費が予想外に高いと考えられるもの,あるいは防災上重要な建物の機能が麻痺したものもある。
 これらはいずれも現行の設計,施工体系が完成した建物の総合的な耐震性能を明確には把握しきれていないことに起因するものであると考えられる。
 さらに今回の地震の際にはある程度の数の強震記録が得られたが,平均的な地震動の大きさ,あるいは局地的な地震動の増幅等を把握するには,極めて限られた情報しか得られていないなど,防災対策の向上のために必要とされる多くの問題点も提起された。
 これらを改善するためには,長期的には性能表示型の耐震設計体系の研究・開発を図ると同時に,短期的には現行の設計,施工体系のメンテナンス(部分的修正)とその正しい普及を行う必要がある。

C.1 現行の耐震設計体系のメンテナンス

 現行の耐震設計法の体系は,今回のような再現期間の極めて長いと考えられる地震に対して建物の崩壊を防ぐという設計の考え方に基づく限り,一応の評価を得たと考えられる。しかしながら,以下の点に関する方策が緊急に必要とされる。

 1)剛性のみならず強度分布がアンバランスな建物の耐震化の方策

 2)防災上重要とされる建物の地震時の機能維持の方策

 3)余裕を持った構造設計の推進の方策

C.2 施工・管理体系のグレードアップ

 設計体系と施工・管理体系との目標性能の共有化を図り,最終的に完工する建物の保有する性能レベルを保証する必要がある。

 1)第三者検査を含む品質管理体制の確立

 2)材料の品質管理と施工管理に係わる規定遵守の徹底化と向上

C.3 性能表示型耐震設計法の開発

 耐震性能評価尺度の設定および評価法を確立し,耐震性能(設計目標性能)を設定した設計法の開発・導入が必要である。その際,地震危険度,地盤,地形を考慮した地域係数の導入,建物の用途に応じた多様な安全レベルの設定が必要である。このためには,目標クライテリア,建物用途別安全レベル設定に対する合意形成の推進が急務である。官学民は協調して設計,施工に関する基・規準類の整合を図り,建物総体としての設計・施工の基・規準を確立する必要がある。
 また,これらの基礎となる研究,例えば断層近傍の地震動の性質を含めた設計用地震動,構造物の脆性破壊を含めた地震応答に関する研究等の振興を図る必要がある。

 1)性能表示型設計体系の開発と性能評価法の確立

 2)性能レベル(設計目標)に応じた設計クライテリアの明確化

 3)建物用途による要求性能レベルの設定

 4)地域による要求性能レベルの設定(ゾーネーション,特にマイクロゾーニング手法の確立)

 5)設計用地震動およびそれに対する建物の応答に関する研究の推進

C.4 基礎構造の耐震設計体系のグレードアップ

 埋め立て地域ならびに沿岸地域の臨海部等軟弱地盤において発生した大規模な液状化に対し,上部構造の設計法と整合性のある基礎および基礎杭設計法の確立が急務である。それらと平行して地盤改良技術(液状化対策)の普及と新工法の開発も併せて行い,基礎構造の耐震性能を高める必要がある。

 1)基礎構造,特に杭基礎の耐震評価法の開発と補修,補強法の確立

 2)軟弱地盤の改良技術の活用と開発

C.5 設備機器および非構造材の耐震性評価手法の開発

 設備機器,エレベーター,外装材等の非構造材の耐震安全レベルの設定とそれに対する耐震設計法の見直しが急務である。また,家具の転倒,滑動に対する予測手法の確立と防止対策の提案,啓発,普及が重要である。

 1)非構造材およびエレベーターを含む設備に要求される目標耐震性能の明確化

 2)家具の転倒防止などの目標性能を確保する対策の開発,確立と普及



D.災害情報システムの確立

 今回の被災地域では電話回線の途絶等により,地震直後の状況把握や情報伝達に多大の困難が生じた。また,救援対策や復旧計画の基礎となるべき都市情報データベースも存在していなかった。災害に強い都市を築くためには,災害情報システムの確立とその適正な運用が不可欠である。

D.1 災害情報ネットワークの整備

 災害の発生に際し,被害状況等の正確な実態を早期に把握するためには,必要な情報を収集・伝達・集約するための拠点を適正に配置し,ネットワークを整備しておく必要がある。また,それとともに情報の信頼性確保の手法を事前に確立しておくことも必要である。

 1)情報拠点の適正配置および全国的展開

 2)災害に強い情報ネットワークの整備

 3)早期に正確な情報を得るための情報収集方法の確立

 4)情報の信頼性確保のための伝達・管理手法の確立

D.2 都市情報データの体系化

 災害に備えて,各地域に特有な地形・地盤・道路・ライフラインの状況,建物・居住者のデータなどの都市情報データを地図情報システムなどを活用することにより体系的に整備し,データベース化しておく必要がある。また災害発生時に適切な初期対応および復旧計画を支援する,リアルタイム防災システム,すなわち地震情報にもとづき即時に被害を予測し,可能な対策をすばやく講じるようなシステムを構築しておくことが望まれる。

 1)所要情報・データの整備

 2)都市情報データベースの構築

 3)リアルタイム防災システム技術の開発と適用

D.3 公開と共有の原則に基づく情報システムの運用

 災害対応や事後対策の適正化のためには,十分な災害情報の確保が不可欠である。このため災害情報システムの運用にあたっては,関係諸組織・機関の相互間における情報の公開と共有を原則とすべきである。

 1)情報公開と共有の原則の確立

 2)緊急時の諸組織・機関の連携体制の確立

 3)公開・共有を支援する情報システム技術の開発と活用

 4)災害情報システムに関する教育と訓練



E.地震災害の防止・軽減に関する基礎的研究の振興

 地震災害の防止・軽減に関する研究が一つの画期的な発明・発見により飛躍的に進歩することは極めて稀で,多くの地道な研究の永年の積み重ねによる成果が総合されながら徐々に進展するものである。地震災害の防止・軽減に関する基礎研究は,それが実用化研究へと発展し,個々の建物あるいは都市の建設に適用されて初めて効果を発揮するものである。
 従って,個々の研究の成果が防災上どのように役立っているかを顕在化させることが困難である。そのために,防災に関する基礎研究への投資に関して世の中の理解を得ることは容易ではない。
しかしながら,防災に関する諸施策は,その基礎となる研究のポテンシァルを継続的に維持しておかなければ推進することができない。
 前項までに示した諸課題は,それらに関する基礎的な学術研究の推進はもちろんであるが,国および地方公共団体の政策としても取り上げられ,強力で持続的な取り組みがなければ解決できないものがほとんである。
 地震災害の防止・軽減に関する基礎研究の振興に関し,諸機関の理解を要請したい。