都市計画中央審議会「都市計画制度の見直しに当たって」
についての本会からの意見
都市計画委員会
1999年10月1日に、都市計画制度の見直しに関し、建設省都市局都市計画課がホームページ等を通じて意見の募集を行いました(11月10日締切)。
そこで都市計画委員会としても急ぎ検討・審議を行い、「意見書(案)」をとりまとめ、学術委員会承認(通信審議による。委員からの意見を考慮して「案」の修正を行った)を経て、11月10日に建設省へ意見書を提出しました。
その後この件につき12月理事会に報告をいたしましたが、ここに意見書の全文と建設省の募集要領(それに添付された意見募集の内容項目を示す「これまでの審議会での検討状況に関する資料」は省略します)を掲載し、会員各位にご報告する次第です。
なお意見表明の手続きは「対外的意見表明にあたっての申し合わせ」(1999年9月24日理事会決)に基づいて行われたものです。きわめて短い時間での意見書作成にもかかわらずご対応くださった学術委員会ならびに事務局に謝意を表する次第です。
結果的に本学会や日本都市計画学会等の学術団体、地方公共団体、業界団体、個人等から約500通の意見が集まり、審議会における都市計画法改正の検討に供されたとのことです。
(都市計画本委員会 委員長 高見沢邦郎)
(参考)都市計画制度の見直しに関する意見募集について
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線引き制度、用途地域制度、地区計画制度等まちづくりの基本となる制度の内容や手続を定めた都市計画法について、現在、都市計画中央審議会計画制度小委員会で、改正の検討が進められています。このほど、同小委員会では、まちづくりに携わる様々な立場の人からの意見を十分に踏まえて今後の検討を進めるため、これまでの検討状況を取りまとめた『都市計画制度の見直しに当たって』を公表しました。
つきましては、『都市計画制度の見直しに当たって』について、皆様方からのご意見を募集致します。
《募集要領》
○意見募集期間:10月1日(金)〜11月10日(水)
○意見提出方法:建設省都市局都市計画課への電子メール・郵送・FAX
○提出されたご意見につきましては,概要を取りまとめた上、11月中旬以降に開催される次回の都市計画中央審議会計画制度小委員会に提出され、同小委員会で検討されます。また、検討の結果は、別途公表される予定です。なお、建築規制など都市計画以外の分野にまたがる意見については、各部局と連携して対応いたします。
※建設省Home Page……http://www.moc.go.jp/
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「都市計画制度の見直しに当たって」についての意見書
1999年11月10日
日本建築学会 都市計画委員会
※この意見書は、日本建築学会学術委員会の承認を得て、
都市計画委員会の責任において意見を表明するものである。
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「都市計画制度の見直しに当たって」についての意見書
提出日 1999年11月10日
提出者 日本建築学会都市計画委員会(委員長:高見沢邦郎)
都市計画法の改正に関する都市計画中央審議会ならびに同・計画制度小委員会のご努力に敬意を表する次第です。都市計画制度の見直しについては日本建築学会都市計画委員会でも強く関心を寄せるところですが、このたび示されました『都市計画制度の見直しに当たって』(以下『見直し』)に対する当委員会の意見をとりまとめました。今後の審議において十分に参考にしてくださるよう、お願いする次第です。
0. はじめに:総論に関して
日本建築学会都市計画委員会は、建築学会の中の一分野として、住民に身近なレベルの土地利用や景観、住環境、地域環境、防災等の諸課題に関し、大都市のみならず地方中小都市をも含めて調査・研究活動を行っている。その成果は、学会刊行の諸論文や報告書として公刊してきたところである。そうした立場から、『見直し』が都市型社会への移行と都市計画の自治事務化を踏まえて、1)地方公共団体、特に市町村の役割を強化すること、2)住民にとって分かりやすい制度とすること、3)既成市街地の再整備を主題と捉えること、4)環境問題への対応を講じること、との問題意識をもっていることに賛意を表したい。
ただし、今回の法改正にあたっては、それぞれについてさらに以下のような配慮や観点の追加があるべきと考える。
意見0-1 以下の点に関して検討内容を補強・追加すべきである
1)地方公共団体、特に市町村の役割強化に関して
・1992年法改正による都市計画マスタープランについては、多くの市町村が住民参加の方法等を工夫しながら法改正の意図を反映する形で策定しつつあることを確認すべきである。
・それらマスタープランの実効性を高めるためにも、自治体が条例等によって地域の特性に合った都市計画を実現することへの期待と支持の表明を行うべきである。
2)住民にとって分かりやすい制度とすることに関して
・法の時々の改正によって、現在の都市計画法が分かりにくい制度になってきてしまったことへの率直な反省の表明を行うべきである。
・住民に都市計画への協力や努力を「求める」だけの時代から、協同(計画策定の段階から公共と住民等が連携して都市計画を進めていく)時代となってきていることを表明すべきである。
3)既成市街地の再整備に関して
・既成市街地を主題と捉えることに異議はないが、その内容として、良好市街地の保全、市街地の景観問題への対応、歴史的市街地(単体としての歴史的建造物を含む)への対応および災害に強い都市づくりの観点が欠如している。この点を表明することが必要である。
4)環境問題への対応に関して
・「残された緑地」などの問題対応的な形で環境を捉えるのでなく、「サステイナブルな都市型社会」を構築するという理念、目標概念を明示すべきである。
−>この点に関しては、既に送付した建築学会協議会資料「環境共生時代の都市・地域計画(1999.9)」ならびに同協議会参加者による法改正への意見書も参照されたい。
意見0-2 今後の法改正等への「課題」を記述すべきである
・都市計画中央審議会でこれまで検討されたものの意見の合意にまで至らず、重要な事項とされながらも今回の『見直し』には反映できていない事項も含め、今回の見直しで検討すべき事項はできるだけ大きなスタンスでそれを明記すべきである。また、検討の結果法制化に至らなかったもののうち引き続き検討が必要なものは記録にとどめておくことが、法の運用段階、さらには次回以降の検討の際に役立つものと考える。
−>なお、これについては本意見書の7.を参照されたい。
1. 都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設に関して
都市域外も含めたサステイナブルな地域づくり、広域的な重要施設の計画等の根拠として都道府県の都市計画に関するマスタープランの必要性は大きく、その創設については基本的に賛意を表する。また、都道府県の都市計画に関するマスタープランは、市町村の都市計画マスタープランを創設した際にも積み残された課題であり、日本の実状に合った都市計画システムを構築する上でも必要性は大きいと考える。これは同時に、整開保システムの問題点を改善する手だてでもある。
ただし、本マスタープランの位置づけ、内容についてはいくつかの問題点があり、これらに十分配慮した検討が必要と考える。
意見1-1 マスタープランは行政区域全域を対象としたものに拡充すべきである
・『見直し』では都道府県の都市計画に関するマスタープランは「都道府県全域を対象」としているが、市町村の都市計画マスタープランについても、都市域のみならず農漁村、自然地をも対象とした計画にしていくことを明確にし、具体化に向けて検討すべきである。他省庁との調整を要するため短期的にはその予備的段階にとどまる可能性があるとしても、大きな方向については明示すべきである。
意見1-2 都道府県の都市計画に関するマスタープランは、市町村の都市計画マスタープランを重視した現実的な制度にすべきである
・市町村の都市計画マスタープランが新しい都市計画の地平を切り開きつつあるとき、都道府県のそれが上位計画として市町村の自由闊達な計画活動を阻害する恐れがある。市町村の意志を尊重しつつ、適切な分担関係が保てるような内容とすべきである。また、市町村の広域連合によるマスタープラン策定を可能にするなどの制度的仕組みを設けるべきである。
・市町村間の水平調整に都道府県がマスタープランで臨むスタイルとなることが予想されるが、実際的にはこのようなマスタープラン以外に多様な調整計画の方法論が想定される。本マスタープランに過剰な役割をもたせることは弊害を生じる可能性があることに十分配慮すべきである。
意見1-3 マスタープラン策定後のモニタリング制度を導入すべきである
・都道府県の都市計画に関するマスタープラン、および市町村の都市計画マスタープランについては、策定後の進行管理が重要である。そのためにはモニタリングの手法を導入し、常時行政が状況把握を行い、また、得た情報を市民に公開することが必要である。
2. 都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方に関して
都市活動の広域化や社会経済状況の変化の中で、都市計画区域外においても開発や建築行為を規制する必要は大きい。また、新たな交通拠点の立地とそれに伴う土地利用について、積極的に方向性を打ち出して誘導していくことも必要である。
こうした基本認識は『見直し』と同様のものと考えるが、具体的な方法においてはいくつかの問題点があり、慎重な検討を願いたい。
意見2-1 都市計画区域外での区域の設定はマスタープランにもとづいて行うべきである
・都市計画区域外での「スポット的」「機動的」な区域の設定は、長期的・総合的視野を欠いたものになる恐れが大きい。都道府県の都市計画に関するマスタープランは「都道府県全域を対象とし」という『見直し』の内容に賛同するが、市町村の都市計画マスタープランも同様に市町村全域を対象とするような制度に拡充・発展すべきである。それによって初めて、都市計画区域外でのそうした区域の設定が可能になると考える。
意見2-2 大規模建築物の立地誘導には、総合的な判断が必要である
・大規模建築物の立地によるマイナスの影響を最小化しつつ効用を最大限高めるために、届出・勧告を含む何らかの仕組みを整えることには賛同するが、これまでの狭義の都市計画の側面のみから知事がそうした行為を行うには限界がある。開発許可制度との関係、大店立地法との関係、環境アセスメントとの関係、条例との関係などにおいて十分な調整等が必要である。
3. 線引き制度及び開発許可制度の見直しに関して
都市化社会に対応した線引き制度ではあるが、その骨格を引き続き維持するとする『見直し』の内容にまず賛意を表したい。とはいえ、これまでの人口密度・人口フレームから出発する整開保や線引きの仕組みが都市型社会の時代に必ずしも適切ではなくなっていること、そうした社会に対応した仕組みに変換していくことを強調すべきである。
一方の開発許可制度を今後、より柔軟に運用できる制度とすることにも賛同するが、これは大きくみれば、都市化社会に対応してつくられた開発許可制度が、都市型社会に対応する制度へと根本的な革新を迫られているものと理解できるし、そうした点を基本的視座として強調すべきと考える。
こうした都市型社会、地方分権社会を前提とすると、これまで、各市町村が「まちづくり条例」等を制定して、線引き制度や開発許可制度の不備を補い、限界を突破しようとする事例が見られた状況を積極的に評価することも重要である。
意見3-1 線引き制度は基本的に維持し、都市型社会に対応した制度に転換することが必要である
・線引き制度は維持しつつも、人口密度・人口フレームから出発する現行の固い仕組みを改革し、基本的には市町村が都市計画マスタープランや条例によって方針や基準を定めて運用できるような、都市型社会に即した内容に転換すべきである。
意見3-2 線引きの廃止には、相当の措置が必要である
・仮に線引きを一定の地域で廃止する場合には、当該地域のマスタープランへの適合を義務づけるなどの措置をとり、「非線引き」への無計画ななだれ込みが生じないようにすべォである。
意見3-3 開発許可制度を都市型社会に対応した制度とするために、「開発」の範囲を拡大するとともに地域の実状に応じた運用を可能とすることが必要である
・開発許可の技術基準に対して市町村が条例により基準を強化又は付加できるようにすることには賛成であるが、さらに、国が定める最低基準の中で、開発許可の対象となる「開発」そのものの範囲を一定程度ひろげるとともに、市町村が地域の実情に合わせて「開発」の内容を定義できるようにすべきである。
・開発許可制度を都市型社会に対応した制度とするためには、従来のような二次元的なとらえ方ではなく、建築基準法とも関連づけながら地域の景観や歴史的建造物にも配慮した三次元的な空間づくりのための制度に転換していくべきである。また、環境面や防災面にも配慮した空間づくりに資するとともに、各地の条例によるまちづくりを妨げないような内容とすることを期待する。
4. 既成市街地再整備のための新たな制度に関して
都市型社会への移行に伴い既成市街地再整備に力点が置かれることにはおおいに賛同するところであり、また、地区計画をより一般的な制度に転換していくことにも賛意を表したい。
しかし、今後実効性のある既成市街地の整備を進めていくためには付加すべき事項や、さらに踏み込むべき点が少なくないので、特段の配慮を望みたい。
意見4-1 防災、保全、景観、歴史の各課題の重要性を「基本的考え」に付加すべきである
・阪神淡路大震災や、近時のトルコ、台湾における震災被害を都市計画の主題として正面から捉えなければならない。既成市街地の再整備には、災害に強い都市づくりの観点を含める必要がある。
・既成市街地の再整備が、すなわち土地利用制限の緩和という『見直し』の認識には問題がある。都市型社会に対応した都市づくりのためには、現在良好な環境をもつ地域を「保全」することも重要な柱になるべきである。この「保全」という行為は、地区の不良化による再開発需要を低減する効果があり、サステイナブルな都市づくりには欠かせない重要なものであると考える。
・従来の都市計画は市街地の景観問題に対して極めて無力であり、文化財保護や美観行政に委ねる傾向があったことは否めない。景観問題は都市計画にとっても重要な課題であり、都市計画制度としてこうした観点を積極的にバックアップしていくことが都市型社会の都市計画に極めて重要であることを強調したい。
・同様に、歴史的市街地に対するこれまでの都市計画が伝建地区による対応に限られており、広く地方都市の既成市街地にみられる歴史性を有する建造物や市街地の保全整備をバックアップしていくことが重要であるとの視点を是非付加すべきと考える。
意見4-2 防災性の高い都市づくりに資する制度の付加・拡充が必要である
・阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、非常時の都市計画決定のあり方、復旧・復興のための都市計画制度のあり方、復興地区計画制度、仮設住宅用地の時限的都市計画決定等につき検討するべきである。さらに、都市計画の枠組みだけでは生活再建に資する総合的な復興が困難であるとの認識を国レベルでも再度確認・共有したうえで、非常時、復旧・復興時の都市計画制度の役割につき他分野と広く連携・調整する仕組みを検討することを期待したい。
−>なおこの点については、建築学会都市計画委員会のメンバーも中心的に関わってとりまとめた日本建築学会『建築および都市の防災性向上に関する提言』(特に第三次提言、1998.1)や、日本都市計画学会防災・復興問題研究特別委員会編著『安全と再生の都市づくり』(学芸出版社、1999.2)を参照されたい。
意見4-3 地区計画制度は、地区の総合的な環境性能を高める観点から制度構成することを基本とすべきである
・地区計画制度の見直しに際し、現行の地域地区の指定が現状追認的になされており、従って基本的には地区計画は「規制強化型」の運用を行うべきであることをまず強調したい。
・しかし、より本質的に地区計画制度は、「規制強化」と「規制緩和」のどちらが好ましいかというのではなく、地区の総合的な環境性能を高める観点から運用すべきである。例えば地方の既成市街地に多くみられる歴史的市街地では、伝建地区によらずとも、地区計画において防火施設整備を前提として木造建築物が許可されたり建蔽率・容積率が緩和できることが環境性能を高める手だてになりうる。空中権の移転もうまく活用すれば同様の効果が得られるものと考える。
・そうした運用を可能にするためには地区計画制度自体の改革とともに、環境性能を高めるために必要な関連措置に対するバックアップや、人材や情報、技術開発面での支援等が是非必要である。
5. 環境問題等への対応のための制度の強化に関して
環境問題に都市計画が臨むにあたっては、単に貴重なストックを保全するといった即物的・静的なとらえ方ではなく、「サステイナブルな都市・地域の形成」という概念的・動的な観点が必要であるとの視点は総論部分に述べた通りである。
また、環境問題が市民の高い関心を呼んでいることからみても、市町村や地域の固有性、市民の参画、といった観点が「基本的考え方」に記述されるべきと考える。
このように、今後環境問題等に都市計画制度が対応していくためには、その理念や概念および主体を明確にしながら、具体的な手だてを講じていくことが重要である。
意見5-1 地域生態環境や防災・水循環等の観点を取入れた部門別計画を確立すべきである
・昨今、都市周辺部における里山や水源域の土地利用が不安定になるとともに、遊休水田等の増加がみられる。これらの土地利用は緑地の保全やレクレーション機能の向上という観点のみならず、都市の防災機能の向上、地域の生態環境の保全等の観点からも慎重な扱いが必要と考える。そこで、地域生態・防災・水循環等の観点からの調査にもとづいた部門別計画を確立することを提案したい。
意見5-2 風致地区制度を拡充して地域生態・防災・水循環等の公益的観点をも取り入れた制度とすべきである
・風致地区は都市計画の地区の一つであるが、その創設以来、さまざまな自治体で条例等に基づいて様々な活用がなされおおいに普及してきたところである。風致地区制度自体の運用の多様性もさることながら、他制度との連携・補完によりさまざまな地域課題に対応した運用を可能としてきた点できわめて重要な制度の一つになっている。これを環境の観点から先のマスタープランと関連させながら活用できるような制度に拡充することを提案したい。
意見5-3 開発許可制度をベースとしたミチゲーション手法を豊富化すべきである
・サステイナブルな環境をつくっていく場合、土地の買取りや多額の補償が必要な制度だけでは行政による現実的な対応に限界がある。また、開発か保全かのどちらかを選択しなければならない制度では開発者の創造性が発揮できない可能性もある。こうした両者の限界を乗り越え、より質の高い環境を残していくために、開発許可制度をベースとしたミチゲーション手法の豊富化を積極的に検討していくべきである。例えばマスタープランへの記述を根拠に開発許可制度を柔軟に運用している英国の計画協定制度等も参考になると考えられる。
6. 都市計画の決定システムの合理化に関して
現在の都市計画決定システムには多くの問題があり、審議会システム、公聴会等のシステムは形骸化し十分機能しているとは言い難いことをまず確認する必要がある。 また、都市計画システムの運用にあたって従来なされてきた「通達」によるシステムについてはその功罪をしっかり認識するとともに、今後そうした仕組みをどうするのか、『見直し』に提案されている「ガイダンス」の位置づけと機能をどう規定するのかをおおいに検討する必要がある。
また、『見直し』では市町村の都市計画決定への市民参加が強調されているが、都道府県決定への市民参加も重要事項であることを認識として示す必要があり、そうした認識に対応した制度に改革していくことが必要である。
意見6-1 地区レベル、都市レベルの市民参加システムを充実すべきである
・地方分権が進むのに対応して、地区レベル、都市レベルともに市民参加のシステムを充実することが緊急の課題である。この際、都市計画地方審議会の公開性や、市民公募も含む委員選定の工夫、審議会の専門性の確保等が明示されるべきである。また、それを実現するため、都市計画専門家の活用と積極的関与が望まれる。
意見6-2 都市計画のマスタープランへの適合を実質的に担保する方法を検討すべきである
・都市計画の透明性確保のためにマスタープランへの適合が『見直し』にうたわれているが、その必要性は認めるとしても抽象的適合性にとどまる可能性が高く、アカウンタビリティの問題が予想される。より実質的に計画の適合性を説明できる仕組み・方法を検討する必要があると考える。
意見6-3 都市計画ガイダンスは単なる「資料」にとどめるべきではない
・「都市計画ガイダンス」という方法が『見直し』に提示されているが、これを単なる「資料」に終わらせず、むしろ現行の「通達」に代わるものとして、専門家の関与のもと、市民的意見も聴取して定め、都市計画運用の規範として活用できるよう検討するべきである。しかしその場合、各自治体の意欲や創造力を削ぐような内容にならないような配慮が必要である。
・「資料」という意味では、各自治体における模範的・創造的事例をおおいに収集してそれを公開していくことが重要と考える。
意見6-4 各主体の責務についての見直しが必要である
・都市計画法第3条第1項は、地方公共団体が国とは異なる役割をもつこと、すなわち地域の固有性や市民の意向を活かすことなどを表現していない。また、同第2項は、都市の住民は国や地方公共団体による措置に「協力」するだけの役割しか与えられていない。これらは、今日的あるいは将来的な都市計画のあり方に関して不適切である。国の責務と広域自治体、基礎自治体の役割を今日的姿で明文化するとともに、市民や事業者相互のあるいは各行政主体との協同関係をうたうべきである。
7. おわりに:今後への課題
冒頭の意見0-2で述べたように、今回は結論に至らない検討課題においても、重要なものについては何らかの形で記述・記録しておくべきと考える。以下、いくつかを挙げて本意見書の結びとする。
意見7-1 都市型社会に対応した制度改革の長期展望を示すべきである
・現行の都市計画法は開発許可基準等を含んでいるが、法体系としてはこの部分を切り離し、計画法としての充実を図るべきである。開発許可関係の条項は建築基準法の集団規定と一体化して独立させることも検討する必要がある。
意見7-2 サステイナブルな都市づくりのための具体的な研究を積み上げるべきである
・サステイナブルな都市・地域の形成のための具体的・技術的な事項の整理については、学会も含めて検討が遅れている。今後早急に研究や議論を積み重ねて次期の制度改正に反映する必要がある。
意見7-3 市民参加の規定および市民参加を促す支援策の本格的な充実を図るべきである
・都市計画への市民参加についても、わが国がこれまで都市計画制度の参考としてきた諸外国の近年における多様な展開に学ぶべきものが多い。法第3条の改正が今回できないならばその点も含めて、今後の課題としての早急な検討が必要である。
(以上)