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■最新号(第36回:2025年4月1日配信)

日本の耐震設計・構造設計は世界トップレベルと自負されますが、では我が国の構造設計規準類が欧米はもちろん、アジア地域内で参照されているかというと全くそうはなっていません。これは日本の構造設計規準類がいまだに許容応力度設計等の国際標準から外れた設計方式に立脚している点等が大きく、このためにこれらをベースとした英語論文も評価されにくい状況にあります。また、米国のASCE-7を核とした設計体系などと比較し、学会規準と法的規準との整合性が明確でない点も海外から見て非常にわかりづらい点となっています。そこで「規準・論文グローバルタスクフォース・構造規準国際対応WG」ではこの度、各種構造の設計指針を共通化し、法的規準や主要な海外設計規準と整合させるためのアンブレラコード案「部材検定と応答評価(案)」を発行しました。
→学会からのおしらせ2025/03/19
建築構造設計アンブレラコード「部材検定と応答評価(案)」の発行について
(https://www.aij.or.jp/jpn/databox/2025/250319.pdf)
本指針ではまず現行法規との整合性をとる形で部材検定を国際標準の荷重耐力係数設計法(LRFD)に読み替え、併せて性能設計に必要な極稀地震時の応答変形を明示する方針を提案しています。今年1月には行政側との意見交換会でも説明し、国交省審議官・参事官、建築研究所理事、建築センター理事の皆様にも前向きなコメントを戴きました。将来的には荷重係数の評価・修正を盛り込み、日本版ASCE7に育てていって欲しいという願いを込めております。4月以降、構造本委員会構成員の先生方には直接PDFをお送りするほか、建築会館受付でも無料配布する予定です。構造関係の方々には是非、ダウンロードまたは手に取っていただき、ご意見を寄せていただけますと幸いです。

2024年5月,関東大震災100周年日本建築学会提言として,『日本の建築・まち・地域の新常識』が発表されました。これは,100年後の建築・まち・地域づくりに向けて,川口健一委員長を中心に検討が重ねられ、まとめられたた7つの「新常識」を示す提言です。
その一つ目に「住まい手・利用者・管理者の新常識」として,「優良化更新」のススメがあります。経年劣化により価値が下がる建築に適切な管理と更新を行うことで,建築のみならず地域社会の価値も高め,いつも快適で健康に生活できるようにしようとする提案です。
この「優良化更新」という考えをみて,ふと「減築」は「優良化更新」に当たるのではないかと思いました。早速,研究室の大学院生が住宅の「減築」の事例について調べてくれました。その結果,多くのケースで「減築」の工事は,耐震改修・断熱改修・バリアフリー化・日照や風通しなどの環境性能向上を図る工事と共に行われていることが分かりました。正に建築の「優良化更新」です。
「減築」という言葉は,1983年に建築家の天野彰氏により,住みよい老後の家づくりへの提案として初めて使われたようです。そこには,「50才から老後の住まいづくりに取り組みなさい」とあります。これは,経済的に対応可能な年齢のうちに取り組みなさいとことでしょう。
高齢期に暮らしやすい住宅とするための「優良化更新」は,大きな社会課題になっている「空き家」問題の解決にもつながるのではないでしょうか。少しでも長く自分のコミュニティで暮らせることは,確かなことのように感じられます。国や地方自治体からの補助金も含めて,もう少し「優良化更新」の具体的方法を探ってみようと考えております。

今月、万博が開幕します。私の所属する建設会社でも、少なからず設計、施工に携わっていた関係で、私も工事中は何度か現場を訪れ、着工前のモックアップや工事中の視察、竣工直前の出来栄えの確認などを行いました。2月末に最後に現場を訪れた際は既に万博らしい会場の雰囲気が出来上がっていました。思い返せば出だしで色々と新聞紙上を賑わしたつまずきがあったにもかかわらず、今となってみれば(もちろん関係者全員が間に合わせるために頑張ってきたからですが)何事もなかったかのように開幕を迎えるのが建設にかかわった人間としては複雑な気持ちです。私の組織の担当者たちはたいへんな辛い時間を過ごしてきたはずですが、いざここに至ると『なんだか(工事が)終わるのが寂しい気持ち』と言っていたのが印象的です。これが建築を生業とする人間の性なのでしょうね。
ここからは純粋に私個人の感想ですが、建築的な視点で各建物を見てみると、確かに“世界最大の木造建築物”と認定された「大屋根リング」をはじめ、各国パビリオンやテーマ館はそれぞれに色々なことに挑戦しているようです。しかし、子どもの頃に体感した1970年の大阪万博に比べると、何となく物足りない感が否めません。もちろん時代も違い当時と現在の建築技術の進歩に対する概念も全く異なります。EXPO‘70では、お祭り広場のメガストラクチャーやアメリカ館の膜構造、鋼管ユニットの建築など未来の建築に対する実験場のような要素が強く、子どもでもわくわく感が抑えられませんでした。現在は環境配慮が中心となっているので考え方が異なるのは当然と言えば当然です。ただ、この違いが、当初のつまずきのため時間のかかる建築に対しては新たな挑戦をする余裕が無かった、ではないことを願ってやみません。

3月初めに20年前のインド洋津波で大きな被害を受けたスマトラ島・バンダアチェに、行ってきました。ちょうどラマダンの時期だったので、明るい時間に食事をする私がマイノリティーでした。いつも日本で留学生に大変ね!と言っているのと、逆の立場を経験できたのは良い機会でした。災害から20年が経過しましたが、使われなくなるのでは?と危惧した郊外に建設された復興住宅は、すこし空き家もありましたが、現在も多くの人が生活していました。上手く建物の増改築が行われているプロジェクトもあり、復興住宅は売買もされているようでした。復興住宅地の周辺で、新たな住宅地開発も行われていました。災害後、新たに建設された空港ターミナルの維持管理を心配したのですが。ボーディングブリッジも使われており、国際線も継続的に就航していました。人口が増え、経済が成長する地域には「復興」=「新たな開発」というモデルが上手くマッチしていました。一方「新たな開発」・「使われていて良かった」というモデルが当てはまらない地域も、世界には多く存在します。まだその答えに辿り着けていないのですが、新しいモデルがないのかと、お酒が飲めないアチェで考えていました。

日頃、審議会やデザイン審査などを通して景観行政と景観まちづくりに関わるお手伝いをする機会があり、つい先日は東京屋外広告コンクールが開催されたので簡単に触れておきたいと思います。東京屋外広告コンクールは優れた広告物の評価・顕彰と普及・促進を目的に隔年開催され、第14回目の本年は2月に審査会が、また3月に各受賞作品の表彰式が執り行われました。今回は応募総数101件から11作品が表彰対象として選定されました(受賞作品や各賞選評については当該コンクール・ホームページをご参照ください)。
そもそも屋外広告物は、「看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう」(屋外広告物法)と定義され、常時、または一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものとされていますが、今回、特に巨大サイズのデジタル表示装置を使って3D映像による視覚効果を狙ったものや、複数表示装置を連動させ一つの広告シナリオ・ストーリーを動画表示する応募作品が急増した結果、個々の広告のデザイン性や表現の個性が弱まり、かえって企画内容が均質化してしまったと感じました。またこうした巨大サイズのデジタル表示装置は、建築物の外壁面と一体的なものが多く、建築意匠、構造、設備設計への影響や、設置費や運用コスト面での影響も大きく事業面でも屋外広告の規格変更やデザイン見直しが難しい状態で建設と設置が進められるケースが多いことも浮き彫りになりました。さらに屋外広告が掲出される場所が道路や駅前広場など都市の公共空間で禁止区域の特例許可に該当する場合は、沿道や周囲の民間敷地・建物との位置関係から自家用看板・広告などへの視認性を阻害したり、干渉したりする状況を生じさせかねないものも多く、こうしたケースでは民地側への支障が生じないような広告規格、内容・量などとすることへの十分な行政審査と設置者に対する事前指導が必要である状況も共通課題となりました。
都市景観の維持・形成や地域に根ざした景観まちづくりの観点から、屋外広告の規格や表示内容、また装置や媒体の使い方など、見る人々に新たな視点や価値観、発見や気付きを起こさせる屋外広告のデザイン力や設置場所との相乗効果は優れた広告として高い評価に値するものですが、まだまだその対象や効果は限定的であると言わざるを得ません。景観まちづくりの様々な方法や場面、地域のまちづくり主体との協働を図るためには、デジタル表示装置の設置者、広告主、建築主、開発事業者などと地域まちづくり主体との協働の仕組みを構築し、都市景観の主要要素としての屋外広告をモニタリングしていくと共に、適切に制御する社会的な制度の構築と、優れた屋外広告を普及させるためのデザイン支援の体制・仕組みの整備・普及が急がれると感じました。

生成AI、使ってます!
生成AIが登場し、私も様々な場面で活用を始めましたが、既に一部の作業では、既に手放すことができない道具となりつつあります。使ってみると、確かに手軽で便利。日々の業務に伴う作業で、その恩恵を受けることは少なくありません。しかしその一方で、どこか完璧とは言い難い側面や、生成された結果へのわずかな不信感を払いきれないところがあるのも事実です。
ざっくり言えば、文章生成系のAIは完成度が高く、利便性は明らかにあります。特に仕事で度々必要となる定型文の作成や、冗長な文章の要約には効果を発揮します。もし、読まなければならない膨大な資料が、デジタルテキストデータならば、生成AIはかなり効率良く要約してくれるので、内容の把握は楽になり、時間の節約が出来ます。ちょっと意外な使い方かもしれませんが、YouTubeの動画を要約してくれる拡張機能も非常に便利です。現代の玉石混交の動画が多数ある時代に、この機能はとても役に立ちます。加えて、英語が得意とはいえない私にとっては、日々の打ち合わせで時折必要になる英文レターやなどを作成する際には、生成AIは強力な助っ人になっています。ただし、AIも様々なものが登場して、それぞれ得意不得意があることも判ってきました。たとえば英文生成の際には、ChatGPTだけでなくDeepLを併用することで、より正確な表現やニュアンスに対応することが可能になります。その一方で、まだまだ改善の余地がある分野もあります。例えば、誤字脱字のチェックは生成AIの仕組みからして得意な領域ではないかと予想していたのですが、実際に生成AIにチェックを依頼してみると、結果は見過ごしが多く、完全に信頼できるものではありません。
私の本業である建築設計に直結する、画像生成AIについてもいろいろとトライをしてみています。確かに、ユニークで刺激になる画像をいとも簡単に生成してくれるので、プロジェクトと最初期のブレインストーミングでは有効で、この刺激を求めて、私の周りでも急激にユーザーや使用例が増えているようです。「いとも簡単に」とは書きましたが、プロフェショナルな要求に耐える絵を描かせようと思うと、今の画像生成AIで描くことが急に難しくなります。画像生成AIを使って画像を生成するプロセスは、どういう画像が欲しいのかをAIに伝えるための「プロンプト」と呼ばれる文章を用意して、AIに読み込ませるという作業になります。画像を描かせることは簡単なのですが、気に入った画像を描かせるためには、プロンプトを少し変えて、画像を描くことを繰り返す必要があります。このプロセスは基本的には「数打ちゃ、当たる」といった世界です。
イメージにぴったり合った画像が最初に描かれれば問題はないのですが、通常は何十枚もの画像をAIに描かせて、満足とはいかないがぎりぎり合格点の画像を手に入れることが出来るわけです。問題は、その画像をブラッシュアップする、ちょっとだけ変更するといった、人間が作業していれば当たり前にできる作業が、実は現在の画像生成系のAIには極めて苦手な作業であるようです。同じ空間や人物を少し異なる視点で描くこと、空間や人物も少し変わってしまって、ブラッシュアップがうまくいかないという事態が多発してしまうのです。
とはいえ、生成AIが日々進化していることは間違いありません。今は、これらの課題を認識しつつ、自分自身にとって最適な使い方を模索して、不信感を生成AIを進化させるパワーにすることが重要だと思っています。そんなわけでで、今回の文章も生成AIにアシストしてもらい書いてみました。
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