会長・副会長からの近況報告(メルマガ)

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■最新号(第33回:2024年10月1日配信)


竹内 徹
会長 竹内徹(東京科学大学教授)

 この原稿を書いている数日前に能登半島の集中豪雨による大きな被害が発生しました。2016年の熊本地震の後もそうでしたが、大きな災害の傷が癒えない地域に再び災害が襲う様子を見るのはつらいことです。被害に会われた方々に深くお見舞い申し上げるとともに、日本建築学会として何ができるか引き続き尽力していきたいと思います。
 8月末から9月にかけて、日本建築学会大会とアジアの建築交流国際シンポジウム(ISAIA)という大きな集まりがありました。大会懇親会では明治大学長と千代田区長にお越しいただき、神田の歴史文化と防災をどのように両立していくかという熱い議論を戴きました。ISAIAでも中国建築学会、韓国建築学会、インドネシア建築学会の会長および役員の方々に京都にお越しいただき、アジアを跨ぐ建築文化の再構築や防災減災に関するセッションを含めた700を超える講演がありました。個々の建築や基礎地盤の性能を上げる戦術と人口減少・気候変動を意識したまちづくりの大きな戦略がシームレスに議論される場もあり、有意義であったと感じます。議論の輪をいつもの限られた顔ぶれからより異質で多様な場へ広げていくことが重要であると考えます。運営に携わられた皆様に感謝致します。
 話題は変わりますが、8月末に申し込みを締め切りました構造規準類の刊行物ウェブ閲覧サービスには、1,000名を超える方々に申し込みいただきました。深く御礼申し上げます。10月1日からのサービス開始後もご意見を取り入れながら内容の充実に努めていきますので、引き続きご支援の程何卒よろしくお願いいたします。
 
広田 直行
副会長 広田直行(日本大学教授)

 先日、我が家のポストに一冊の書籍が届きました。そのタイトルは白地に金文字で「希望のコミューン」とあり、赤い帯には「今こそ,コミュニティ権を!」という、2024年プリツカー賞を受賞された建築家・山本理顕氏による推薦文が書かれていました。その帯を見て,初夏に放送されたNHKの「視点・論点」に出演された山本理顕氏が、「楽しく暮らすための住まいとは」というテーマでお話しされたことを思い出しました。理顕氏は、その番組で、人が楽しく生きるために必要なコミュニティの大切さを強調し、視聴者に対して「プライバシーの確保」と「集まって暮らす大切さ」のどちらを選ぶべきか、と問いかけていたように感じました。
 また、近年の計画系の論文には,かつて多く見られた公共施設の供給を主題とした研究から、住民のニーズを重視する研究へと視点が移行している傾向が見られます。施設の供給や運営において公共性を重視する視点にこだわらず、そのコミュニティが評価する価値を優先する視点への変化です。
 現在,多くの自治体が少子高齢化による税収減に直面しており、社会的課題の解決には行政とコミュニティが協働する社会を目指した「コミュニティ・アセット」の活用が求められています。これからの時代は「民主化」と「コミュニティ」がキーワードとなるでしょう。この週末、「希望のコミューン: 新・都市の論理」を読むのが楽しみです。
 
賀持 剛一
副会長 賀持剛一(㈱大林組設計本部常務執行役員設計本部長)

 「オーバーツーリズム」、この言葉を聞くようになってどのくらい経つでしょうか?コロナ禍の前にはアジア人を中心とする外国人が街中に溢れていたのが、コロナ禍に入って(当然ですが)パタッと人がいなくなり、昨年のコロナ5類移行以来再び街は外国人で溢れかえっています。コロナ禍前と大きく異なるのは西欧人の割合が圧倒的に増えていることでしょうか。これは円安の影響が大きいのでしょう。1980~90年代は例えばシンガポールなどは日本からたくさんの買い物ツアーが出るような買い物天国でしたが、今では全く逆転しています。現在は日本人が海外で買い物をすると恐ろしく高い感覚になります。(先日、海外の空港で食べたサンドイッチ+コーヒーは円換算すると約2,700円でした!) ホテル代も最近は日本の値段も上がってきてはいますが、それでも欧米、シンガポールのホテルは日本のほぼ倍近い値段です。これでは外国人が大挙して日本に訪れるのも仕方ないでしょう。私の住んでいる中央区では、昼の銀座、築地など恐らく日本人より多くの欧米、アジアからの外国人で歩道は一杯で、散歩していても通り過ぎるのが困難な程です。京都では、祇園などの繁華街は日本人を探すのが難しいほどで、電車、バスなどの公共交通機関はもとよりタクシーを拾うのもほぼ不可能といった状況です。
 決して文句を言っている訳ではありません。たくさんの外国の方が日本に来て日本の文化を体験するのは喜ばしい事です。ただ、心配になるのは、彼らの殆どが来日の目的とする日本の食、文化、歴史の体験は、彼らに何をもたらしているのでしょう?日本は安くて便利で安全できれいな観光地、それだけではあまりにも悲しすぎます。大なり小なり、彼らの思想、概念、或いはレスペクトの精神に何らかの影響を与えていることを願ってやみません。今回はあまり建築とは関係のない話でしたが、街であの人混みを見るたびに、そんなことを思ってしまう今日この頃です。
 
牧 紀男
副会長 牧紀男(京都大学防災研究所教授)

 2024年9月10日―13日、京都工芸繊維大学をメイン会場に第14回アジアの建築交流国際シンポジウム(以下、ISAIA)が開催されました。新型コロナ感染症の影響もあり、対面形式での開催は2018年10月の韓国・平昌以来6年ぶりとなりました。久々の対面での開催、また会場が京都ということもあり、韓国・中国・日本(並び順は次回以降の開催順)の3建築学会の会長、インドネシア建築学会会長、各学会の役員の方をふくめ大変多くの方々にご参加いただきました。最終的に757編(口頭発表633、ポスター発表124)<アブストラクト投稿数は1263題>の発表が行われました。運営する側としてはパーティー会場が溢れないか、昼食の数が不足することはないか、ということにヒヤヒヤしておりました。
 テーマセッションも企画され、建築史学論、デジタル技術、アフリカ、生活、防災といった様々なテーマについて議論が行われ、各会場とも盛況でした。またアジア各国の若手建築家によるデザインスタジオも開催され、公募で選ばれたアジア各国の学生が参加しました。キャンパスを使わせていただいた京都工芸繊維大学の皆様、協賛・助成をいただいた企業・団体、実行委員の方々他には、開催にあたり多くの方に大変なご尽力をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。さて、次回のISAIは大韓建築学会が担当し2026 年10に韓国・大田広域市で開催されます。ぜひご参加ください。
 
有賀 隆
副会長 有賀隆(早稲田大学教授)

 このメルマガを書いているいまも、一昨日からの記録的な豪雨により石川県能登地方の輪島市、珠洲市、能登町とその周辺で河川の氾濫や土砂崩れなどによる大きな被害が出ています。まずこの豪雨災害によりお亡くなりになられた方々に対し心より哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。くれぐれもご自愛いただき、一日も早く復旧されますことを心よりお祈り申し上げます。また現在、安否不明の方々の無事をお祈りすると共に、捜索や被災者救済のために尽力されている方々に深く敬意を表します。
 これまで都市設計や居住地計画は、その時代に求められる計画の役割や科学技術の進歩による自然環境や生態系への理解の深化とともに、理論と実践の両面で進化してきました。ところが、人間活動の急激な膨張で、都市が成立し機能するための諸活動が自然環境や生態系システムに対して無視できない大きさの影響を与えている現代都市の課題、さらに地球的な気候変動に伴う大規模災害の頻発化と激甚化などに接するとき、自然環境、物的環境(建築・都市)、社会環境が相互に持続できる人間居住地や都市の形、またそれを実現する社会制度を再構築することが急務となっています。
 大規模自然災害に脆弱な現在の都市機能や居住地、健康に害する恐れのある環境汚染への懸念、住民高齢化と人口減少の急進が招く地域共同体の機能低下と居住地の不安定化など、長期、短期双方に関わる都市と自然環境との関係を再考し、専門分野を横断する連携・協働を通した知見と成果を地域再生や都市更新の具体像へフィードバックさせていくことが求められています。そのために、建築学会ならではの産官学一体の会員活動を通して、ひろく社会技術としての計画・事業の研究・開発を推進していくことが求められていると考えます。
 
山梨 知彦
副会長 山梨知彦(㈱日建設計チーフデザインオフィサー常務執行役員)

 昨年に続き、今年の夏も記録的な暑さに見舞われ、日常生活にさまざまな影響が出ています。我が家も例外ではなく、家族から住環境の改善について提案を求められました。「来年の夏は涼しく過ごしたい。コストは出来るだけ抑えつつ、眺望を生かした効果的な室内気温対策を考えてほしい」というシンプルな要求です。
 我が家は南東と南西の二面が大型ガラス建具で、ベネチアンブラインドは設置してはいるもののバルコニーや庇がないため、日中の太陽光が容赦なく差し込みます。これまでは空調機のおかげでなんとか快適な範囲を保っていましたが、最近の猛暑では空調の効きが悪くなり、電気代も跳ね上がりました。これを受け、建築設計を生業としている私に、住環境の改善を求める声が上がったのです。
 まず考えたのは、外付けの中間庇やルーバー、ブラインドを使って、太陽光の直射を防ぐ方法でした。しかし、これはマンションの共有部分の改修が必要で、現実的には難しい選択肢です。次に、真空ガラス+樹脂サッシを設置し、外側のガラスとの間に遮光装置を入れる案も浮かびましたが、コストがかかりすぎます。ダイレクトゲインを抑える現実的な手段として、可視光線以外を反射するフィルムを貼る方法も検討しましたが、期待できる効果が不確かです。
 また、室外機が南向きのバルコニーに設置され、コンクリート手すりで囲まれて通風が悪く、熱交換がうまくできていないことに気づきました。架台を使って室外機を手すりの高さまで持ち上げれば改善される可能性も考えましたが、確信が持てず家族の同意も得られません。さらに、職人不足もあり、単発工事の受注先が見つからず工事費の見積もりすらできませんでした。その結果、費用対効果をまとめることができず、秋が訪れてしまいました。
 こうした問題は、都市部に限らず多くのマンション住民が直面していることでしょう。最近の生成AI技術の発展を活用すれば、こうした身近ながら難しいエネルギー問題に解決策を提供できるかもしれません。AIによってコスト削減や二酸化炭素の排出削減効果を可視化できれば、これらの社会課題がより地に足が着いたものとして認識されることでしょう。建築学会が今後目指すべき方向のひとつとして、AIを活用したソリューションの提供による建築リテラシーの向上を考えていくべきかもしれません

そんなことを考えていた夏の終わり、石川県能登地方の豪雨による被災のニュースが飛び込んできました。この豪雨にも地球温暖化の影響が表れていると感じます。家族からのささやかなクレームの解決にとどまらず、地球温暖化の根本的原因である二酸化炭素の削減に向けた視点を忘れてはならないと、改めて強く感じました。
 

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