第20回 会長・副会長からの近況報告(メルマガ)(2023年1月6日配信)

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 明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。明るい兆しは見えてきたものの、新型コロナウイルス感染症はまだ大きな影響を世界中にもたらしています。昨年2月にはロシアがウクライナに侵攻し戦争状態が続くなど、世界情勢が極めて不安定になっています。そのような中ですが、会員の皆様にとりまして、明るく豊かな年になることを心より祈念申し上げます。年頭所感は建築雑誌1月号に掲載させて頂くとともに、学会ホームページにも掲載させて頂きました。2023年も皆様からのご意見も頂きながら、しっかりと頑張って行きたいと思います。
https://www.aij.or.jp/jpn/databox/2023/230101_new_y.pdf

 例年、新年には日本建築学会、日本建築家協会、東京建築士会が建築会館ホールに集まって交札会を行っていました。今年もオンライン開催ですが1月6日(金)16:00~17:00に行う予定です。叙勲者・褒章受章者・功労者祝賀会も兼ねております。YouTubeで配信致しますので、お時間の許す方はご参加頂ければ幸いです。
https://www.aij.or.jp/event/detail.html?productId=674403

 昨年の正月に報告させて頂いた住宅・建築分野のカーボンニュートラル対策はこの1年で大きく進みました。省エネ法などエネルギー関連5法の改正が5月13日に可決・成立しました。また、建築物省エネ法が2022年6月13日に可決・成立し、同17日に公布されました。全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が2025年度から義務づけされます。また、公布後1年以内施行分の整備省令が次々と公布されています。床面積2000m²以上の大規模非住宅建築物は2024年度から義務基準が0.75~0.85に引き上げられることが12月7日に官報に掲載されました。その値はBEI(Building Energy Index、省エネルギー性能指標)と呼ばれます。新建築のデータシートや日建連表彰BCS賞においても表示がされるようになりました。現在、例えばBEI=0.9で新築された大規模非住宅建物は、1年半後には新しい基準に適合しない建物になってしまいます。我が国のエネルギー自給率は11%しかなく、世界情勢が不安定になる中でエネルギー安全保障も議論されるようになってきました。まずは、建築分野が責務を果たすことが大切だと思っています。

国土交通省 建築物省エネ法について
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_tk4_000103.html

 東京都では2030年に向けたカーボンハーフ実現が検討されていましたが、東京都環境確保条例が12月15日に可決成立しました。東京都では建物関連からの排出が7割もあります。戸建住宅に関しては断熱、省エネに加えて、住宅メーカー約50社に対して太陽光発電設備の設置が義務化されます。さらに、国交省主導でエンボディイド・カーボンを議論する「ゼロカーボンビル(LCCO2ネットゼロ)推進会議」が住宅・建築SDGs推進センター(IBECs)に設置されました。本会の脱炭素タスクフォースで議論をしてきましたが、行政でもその重要性を理解して頂けたのだと思っております。

東京都 太陽光ポータル
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/solar_portal/index.html

ゼロカーボンビル(LCCO2ネットゼロ)推進会議
https://www.ibec.or.jp/zero-carbon_building/

 
田辺 新一
会長 田辺新一(早稲田大学教授)
 日本建築学会・会員の皆様、明けましておめでとうございます。私自身、2023年を無事に明けることができたかどうか、このメルマガを書いているのが2022年12月末であるため定かではありませんが、大きな期待を込めて2023年という年を過ごしたいと思います。
 さて、副会長の任期も残すところ5か月弱となりました。光陰矢の如しであり、慌ただしく1年半余りが過ぎていきました。副会長立候補時にしたためた以下の4項目の所信表明にあらためて目を通してみますと、未だどれも十分には果たせていないことに気付かされ、残された5か月間、ネジを巻き直して任務を遂行しなければならないと強く感じました。
(1)SDGs達成に向けた学会活動の推進
 2021年3月に「日本建築学会SDGs宣言」が示された後、「建築SDGs宣言推進特別調査委員会」(https://www.aij.or.jp/syakaini-zutaiou/y070-17.html)が設置され、2023年10月に「建築SDGs宣言アクション」を示すことを目標にここまで精力的な取組みがなされていますが、これもひとえに伊香賀俊治委員長(前副会長)を中心とした委員の皆様の献身的な活動のお蔭であると思います。これに満足せず、建築業界の2030年のSDGs達成に向けて、今後も継続的な活動を推進して参りたいと思います。
(2)真のWell-beingをもたらす建築・社会空間の新価値創造に向けた学会活動の推進
 未だに、Well-beingをもたらす新しい価値とは何かを模索し続けている状況であり、その答えは一向に見出せていません。焦って生半可な答えを出すべき内容ではありませんので、まずは自分の専門分野(建築材料、建築防火)に限って新しい価値とは何かを追求していきたいと思います。地球温暖化物質である二酸化炭素がその鍵を握っていそうな気もしており、地球という惑星の上で活動する我々にとっての建築材料はどうあるべきか、というところに答えがあるのかもしれません。
(3)建築関連団体および他分野・異分野との双方向連携強化による学会活動の学際的展開
 幸いにも、田辺会長の先導によって2021年11月に土木学会とMOUが締結された後、共同タスクフォースを設置して1年間、両学会が協力して何ができるかについて議論し、実質的な共同活動をスタートすることができました。しかしながら、土木学会は親戚筋の学会とも言え、異分野の学協会との連携については、まだまだ先のことであるというのは否めません。今後も、日本建築学会の発展に向けて、地道に他分野・異分野との連携構築に努めていかなければと思いを新たにしました。
(4)DXによる学会活動の合理化・効率化の推進
 2021年秋に学会活動のDXタスクフォースの設置を田辺会長より仰せつかり、これまで、委員会活動、書籍・出版物、講習会・報告会、大会・研究集会などに関して、DXのあり方について1年間に渡り議論を重ねて参りました。その成果を今春には提言書として纏め、皆様にご報告できることと思います。しかし、その実装がなされないことには意味がありませんので、2023年は学会活動の実質的DXの実装元年にしたいと思っておりますので、皆様方のご協力、よろしくお願いいたします。

 
野口 貴文
副会長 野口貴文(東京大学教授)
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 昨年末に福島に行く機会がありました。原発の事故以来、初めてそのエリアに足を踏み入れました。福島第一原子力発電所事故は、2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う津波により、東京電力の福島第一原子力発電所で発生した原子力事故です。1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所事故以来、最も深刻な原子力事故となりました。国際原子力事象評価尺度(INES)において、7段階レベルのうち、当初はレベル5に分類されましたたが、のちに最高レベルの7(深刻な事故)に引き上げられた事故です。レベル7に分類されている事故は、チェルノブイリ原子力発電所事故と、福島第一原子力発電所事故の2つのみとなっています。2015年3月時点で、原子炉内にあった核燃料のほぼ全量が溶融しています。この事故に起因する放射性物質による汚染で、2020年3月時点帰還困難地域は、名古屋市とほぼ同じ面積の337km2となっています。まだ多くの地域で帰宅困難エリアとなっており人が住んでいない多くの民家や耕すことのできない田畑があり雑草が生い茂っていました。一方、除染が済んでいる特定復興再生拠点区域として大熊町など一部の区域に住民が戻り、徐々にではありますが元の姿をとりもどしつつあります。また多くの方がその除染の作業や廃炉に携わっています。2022年現在、廃炉作業が行われており、順調に進行すれば2041年から2051年頃までに完了する見込みとなっています。まだまだ時間がかかる長い道のりです。

 
田名網 雅人
副会長 田名網雅人(鹿島建設㈱常務執行役員建築設計本部副本部長)
 あけましておめでとうございます。
 「一年の計は元旦にあり」ということで、皆様も、今年の計画を色々と練っておられることと思います。この言葉、中国の明時代の月令広義か毛利元就の訓示を出自とするかで説が分かれているようですが、どちらも続きがあって、始まりの時に計画を立てることとだけではなく、実行する持続力が重要であることが述べられています。勤勉な皆さまのことですから、流石に三日坊主ということは無いとは思いますが、一年は短いようで長く、志を維持することは大変なことには変わりはないようです。先の月令広義説では、生活の基本を解いた「四計」がオリジナルとされており、「一日之計在晨」に始まり「一家之計在」で終わります。家族の未来と健康の大切さで締められている訳です。
 思い返せば2022年は、私の専門とする建築計画学において本学会にも貢献された多くの方が逝去された年でした。3月に西出和彦先生、5月に岡田光正先生、7月に高橋鷹志先生、10月には小林秀樹先生、そして、年末の12月には、厳爽先生がお亡くなりになりました。5月には計画的にも素晴らしい建築や都市を実現された池田武邦先生がお亡くなりになり、私事ですが大学の同期として建築論をたたかわせた友人を7月に失いました。
 自らが刺激を受けたり、直接、可愛がって頂いたりして、多大なる影響を受けた方々の訃報に接することは、本当に辛いことです。まだまだおやりになりたかったことも色々とあったであろうことを思うと、健康なくして「計画」が存在しないことも実感します。新年の言葉を、悲しい話で始めてしまって誠に恐縮ですが、志を立てながらも、亡くなられた方々の思いを受け継ぎつつ、今年も健康を大切に、こつこつとやって行きたいとおもいます。
 2023年が、皆さま方にとっても健康で実りある年でありますように。

 
小野田 泰明
副会長 小野田泰明(東北大学教授)
何処へ「戻る」か?
 皆様、新年おめでとうございます。
 ちょうど1年前の2021年末からお正月にかけては、日本の新型コロナの感染者数は非常に少なくなった時期でした。その後の夏に第7波が来て新規感染者数が1日20万人超を数えることになるとは誰も思っていなかった頃でした。ロシアのウクライナ侵攻も始まっていなかったので、ポストコロナについて考えるちょうど良い時期で、お正月1月3日にNHKで「100分deパンデミック論」というスペシャル番組をやっていました。1年も前のTV番組ですが、内容は、コロナ禍が収束した時に我々はどこへ「行く」のか、を問いかけるものでした。「何事もなかったように元通りに戻る」ということはあり得ない。では、どこへ「行く」べきなのか、という問いを投げかけるものです。番組についてもう少し続けます。
 コロナ禍の異常なインパクトの中で、世界中がパニックに陥りました。その中で、我々の生活を支え続けてくれている人々、エッセンシャル・ワーカーに大きな負担が集中し、その重要性にあらためて気づかされました。格差や貧困や差別の問題にパンデミックが拍車をかけ、顕在化が加速しました。パンデミックがあぶり出したこれらのことを、見なかったことにして元に戻るということがあるのだろうか、という基調の内容です。いわゆる公助に期待ができなくなる中で、ひとりひとりの心に裕りが無い中でこそ、互いを思いやる気持ちの重要性について考えさせられます。建築を通して社会に関わる者も、営利を超えて、人として何ができるかという視座をもつことの重要性でもあります。
 2023年が始まりました。日本でも今まだ新規感染者数が1日数万人を超える状態の中、世界はwith corona 状態で、経済活動を再開しています。まさに、「元通りの生活に戻ろう」という大きな波が押し寄せ始めています。
 災害が多い国だからこそ、立ち直りが早く、健忘症体質な日本人にとって、忘れずに見つめ続けなければならないことが沢山あるように思います。
 新しい一年が、皆さんにとって多くの幸せをもたらしてくれる一年であることをお祈り申し上げます。

20220103◆100分de名著 新春SP『パンデミック論』 - 動画 Dailymotion
https://www.dailymotion.com/video/x8cmbo9


 
川口 健一
副会長 川口健一(東京大学教授)
 あけましておめでとうございます。
 2022年6月の副会長就任から早くも半年が経過しました。時が経つのは早いものですが、毎月のメルマガの原稿締め切りは、さらに驚くほど早くやってきます。

 新年の話題は「景観」について最近思ったことを書かせていただこうと思います。
 都市景観というと、私たち建築に関わる者にとっては、建物とそれを取り巻く街路や緑地が織りなす景色の集合体ですが、それに加えて土木構造物が多く関与していることは言うまでもありません。私が委員を務めている都内某区の景観専門委員会では、新築案件等に加えて、橋梁の改修や塗り替えという事案が結構な頻度で登場します。レインボーブリッジやゲートブリッジなどという華々しいものは稀で、どこにでもある河川や運河にかかる小規模な橋が大半ですが、これも景観を構成する要素として大切に扱わなければならないと感じています。
 あらためて私たちを取り巻く都市や農村で視界に入ってくる風景を思い起こすと、高架や歩道橋、看板や電柱など、実に様々なものが溢れています。この雑多な景色が日本らしいと言ってしまえばそれまでですが、観光立国を標榜している日本としてはいかがなものかと感じずにはいられません。
 そう考えたときに思い出すのが、アレックス・カー氏が2002年に著した「犬と鬼」という本です。ご存じの方も多いと思いますが、彼はアメリカ人ながら日本に永く在住し、今はやりの古民家再生の先駆者となった方です。その著作では、「土建国家日本」という辛辣な表現で日本各地の不必要な土木工事を痛烈に批判していますが、同時に日本への深い理解と愛情も感じることができます。その後も様々な活動をされていますが、2020年刊の新書「ニッポン巡礼」の中に“「無い」光景が最高の贅沢”という表現があり、これがまさに今の日本に必要な感覚ではないかと感じました。

 去る12/12に建築・土木タスクフォースの合同シンポジウムが行われました。建築学会と土木学会が互いに連携出来ることを模索し推進するという主旨ですが、そのWGで検討を進めているテーマは何れも重要な物ばかりで、特に自然災害が激甚化している昨今、お互いが連携して人の命を守るという使命は最優先課題と言えるでしょう。しかし、残念ながら建築と土木が共によい景観をつくっていくことに関する連携は今のところまだ存在しません。
 少し大げさな表現になりますが、日本の都市や農村に美しい風景を取り戻すきっかけを一緒に考えることができたら、それは素晴らしいことではないかと感じた次第です。

本年もよろしくお願いいたします。

 
山本 茂義
副会長 山本茂義(㈱久米設計上級担当役員設計本部プリンシパルCDO)


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