第5回 会長・副会長からの近況報告(メルマガ)(2021年10月5日配信)

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 9月7日(火)から10日に開催された日本建築学会大会に多くの方の御参加を頂き有り難うございました。9月22日に開催された理事会において、速報がありました。約9,400名の参加登録があり、これまでのリアル開催の大会と変わらない方々に御参加頂けたようです。11月の理事会で正式な報告が行われる予定ですが、アンケート意見などを拝見すると高評価を頂いていました。これまでに経験のないWEB大会を成功に導いて頂いた東海支部の皆様、事務局の皆様、運営にご協力頂いた先生方や学生の皆様には心より感謝申し上げます。
 話は変わりますが、学会には「全国建築系大学教育連絡協議会」が設置されています。2021年9月現在、大学、短期大学、短期大学校、工業専門学校、専門学校などの219校が参加しています。2006年12月の国会で成立した「建築士法の一部を改正する法律案」において一級建築士試験の受験要件が改正されましたが、大学教育に大きな影響を及ぼすにも係わらず、充分に調整が行われず、大学側の対応も非常に遅れたものであるという反省から協議会が設置されました。
 そのため、建築士資格制度の改善に関する提案やインターンシップ調査などが行われてきました。2018年12月に建築士法の一部を改正する法律案が成立し、建築学科卒業後に要件を満たせば直ぐに受験が可能になりました。大学院での研究活動も本会の査読論文集に連名者として掲載され要件を満たせば、登録時の実務要件の一部として認められる制度もスタートしました。現在は国土交通省とも頻繁に情報交換を行っています。
 通常は、総会は建築学会大会時に開催されていましたが、昨年度からは新型コロナウイルス感染症の影響により、大会とは別にWEBで開催されています。今年度はこのメルマガが配信される10月5日(火)17時から予定されています。総会に加えて、「ポストコロナの建築教育-次の10年の展望」として各大学から建築教育の実例報告や建築士法改正の影響などに関する意見交換が行われる予定です。お時間が合えば、参加は無料ですので、学会HPの催し物から申し込み頂き参加頂ければ幸いです。

全国建築系大学教育連絡協議会(全建教)総会 ポストコロナの建築教育-次の10年の展望
http://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2021/20211005.pdf

全国建築系大学教育連絡協議会 ホームページ
https://www.aij.or.jp/kaimukankei/w009-12.html


 
田辺 新一
会長 田辺新一(早稲田大学教授)
 今回は2つ報告します。ひとつ目は、「脱炭素都市・建築タスクフォース(主査;伊香賀)」の始動(9月13日)です。田辺新一会長が掲げた4つの課題のひとつを扱っています。建築・都市の脱炭素化研究推進と会員各位の取り組み推進、本会活動(建築会館、出張、DX推進、建築雑誌等)の脱炭素化推進などのアクションプランを検討するために、総論、環境金融、設計事務所、建設会社、住宅会社、不動産会社、行政の先導的取り組みを知るための毎月の勉強会(委員以外も出席可能な拡大委員会)を組み合せ、年度末には公開シンポジウムを開催することを検討中です。順次、お知らせしますので、皆様のご参加をお待ちしています。
 ふたつ目は、「本会所蔵資料の商業利用に関する規程(9月22日理事会承認)」(https://www.aij.or.jp/kanrenkitei.html)です。本会は、貴重な建築図面、写真、スケッチ、模型など多くの寄贈資料を所蔵し、建築展への貸出し、書籍への掲載許可などを行なっています。所蔵資料には、伊藤忠太博士が「妖怪図」も含まれています。これまで故郷の地域振興のために「妖怪図」を地元産品に使いたいという要望に応えることができませんでした。このたび建築博物館委員会(山﨑鯛介委員長)ほか関連委員会と学会事務局の尽力によって、本会所蔵の貴重な学術資料をより多くの方々に親しんでいただける道が開けました。今後が楽しみです。

 
伊香賀 俊治
副会長 伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)
 先日、正副会長出席の元、国土交通省技術基本計画に係るヒアリングがありました。多岐に渡る意見交換が行われましたが、その中で「2050年カーボンニュートラルに向けた動き」がテーマの一つとなりました。カーボンニュートラルについては、上流から下流までサプライチェーン排出量でとらえなければならないので、これにはトレーサビリティが重要になってきます。そのためには、各々のモノに纏わるデータをBIMにひもづけできるようにしていくのが望ましいと言えます。この分野では英国が進んでいて、日本は何周もの周回遅れの様相を呈しています。彼の国ではRIBAが主導して、体系化されてBIMの導入が行われた経緯があり、ここが大きな違いとなっています。カーボンニュートラルとBIMの連携を実現するためには、おそらく省を横断して、国が主導していかないと上手くいかないのではないか、と思っています。学会の尽力でできたLCAもBIMと連携していけると、更に有効性が高まると考えています。国と学会が上手く協働して、民間の知恵も入れながら、より良い方向に進んでいくことを祈念しています。

 
福田 卓司
副会長 福田卓司(㈱日本設計取締役副社長執行役員)
 先の日本建築学会大会では、お世話になりました。初のオンライン開催でしたが、ご尽力頂いた方々のお陰で、突っ込んだ意見交換が出来たと思います。ありがとうございました。
 ということですが、安心してばかりもいられません。ご存知の通り、情報化と国際化の急激な進展で、世界の論文をめぐる環境は一変しています。英語で書かれた論文がOAで提供される形式が一般化し、各論文がどの程度引用されたという指標が、論文集の格付けや個人の業績評価にも関わってくる時代の到来です。
 これ自体は様々な恩恵を我々にもたらしています。一方、この変革は、各国の言葉で書かれた貴重な知的資源をどのように守り育てていくかという普遍的課題を突き付け、建築や都市に関わる我々には、実作の創造と、そこに投入された新規技術、さらにはそれらに紐づいている都市・建築文化の涵養といった視点から、状況をどう活用するかといった点が問われています。これらは、多様なジャンルにわたる広範な議論が必要であると同時に、長期戦で取り組むべき問題でもあります。
 先の理事会で、この難題への対応を検討する「学術・芸術・技術分野の進展タスクフォース」の設置をお認めいただきました。これから二年間、ご参集いただいた素晴らしいメンバーの方々といっしょに、この難題を考えていきたいと思います。内容が専門的であることから、とりつきにくい面もありますが、日本の将来に関わる重要なテーマですので、出来るだけ議論を開いていきたいと考えております。ということで、会員の皆様には、時には厳しくご参画いただき、時には温かく見守って頂けると嬉しいです。よろしくおねがいいたします。

 
小野田 泰明
副会長 小野田泰明(東北大学教授)
 副会長選挙の際の所信表明として掲げた「DX(Digital transformation)による学会活動の合理化・効率化の推進」ですが、今月より2023年3月までの18か月間、「学会活動のDX推進タスクフォース」を設置して検討することとなりました。情報化技術の進歩は思ったより目覚ましく、その利用についていけず、IT難民になってしまいそうな自分が情けないと感じることがしばしばあります。昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大は、学会における委員会活動や講習会・シンポジウム開催などに大きな影響を与え、当初は不便さを感じていたOnlineにも慣れ、その良さを実感する場面もあるようになって参りました。これに機に(乗じて?)、地方会員・企業会員などの方々が学会活動に今までよりも容易に活発に参画できるようにしたり、全会員が本会に膨大に蓄積されている貴重な情報資源(資料、論文など)にスムーズにアクセスできるようにしたりするなど、学会活動の合理化・効率化を積極的に進めていこうと考えております。つきましては、学会活動のDX化に向けて、会員の皆様より忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。

 
野口 貴文
副会長 野口貴文(東京大学教授)
 今般、すべての都道府県において、9月30日に緊急事態宣言を解除することが決定された。これは、社会経済活動の正常化に向けた大きな一歩である。おおむね2年近く続いたこの状況がようやく解除される。
 当初は未知のウイルスとしてリスクを遠ざける以外になかった新型コロナウイルス感染症も、高い感染予防・重症化予防効果を誇るワクチン接種の進展と、早期投与で重症化を防ぐ治療薬の登場により、人類が対処しうるものへと変わりつつある。今回の宣言解除を契機に、感染拡大防止の取組みを継続する「Withコロナ」を前提としつつも、社会経済活動の活性化に向けて舵を切っていくことが求められる。ただしまだ第6波の危惧が消えたわけではない。それに対する「医療提供体制の充実・強化」は、冬を迎える前に早急に取り組むべき課題である。同時に、ワクチン接種の進捗を踏まえた、行動制限や入国制限の段階的緩和など、Withコロナにおける社会経済活動の活性化に向けた対策の実行が急務である。

 
田名網 雅人
副会長 田名網雅人(鹿島建設㈱常務執行役員建築設計本部副本部長)


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