第4回 会長・副会長からの近況報告(メルマガ)(2021年9月3日配信)

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 9月7日(火)からWEBによる日本建築学会大会が開催されます。参加方法などが、これまでと変わっていますので、ご注意を頂ければ幸いです。8月28日(土)に会長・副会長からの近況報告(メルマガ)号外「2021年度日本建築学会大会(東海)に関する御案内」として、詳細を発信させて頂きました。是非、御参加頂ければ幸いです。
 話は変わりますが、昨年10月26日の2050年までにカーボンニュートラルを実現する宣言、4月22日に気候変動サミットに向けて出された2030年度までに温室効果ガス2013年度比46%削減の宣言は、住宅・建築・都市のあり方にも大きな影響を与えます。
 2019年の業務部門の二酸化炭素排出量は消費ベースで日本全体の17%、家庭部門は14%を占め、合計31%となります。さらに、設計、資材・機器製造、建設に伴う排出量は9%になるといわれており、これを加えると40%にもなることを6月のメルマガでもお伝えしました。その後、エネルギー基本計画の素案が総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で8月4日に委員長一任で決定しました。2030年度までに家庭部門で66%、業務部門で50%の二酸化炭素排出の削減が求められています。環境省、経産省の合同会合では、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(案)が議論されています。また、国交省、経産省、環境省の「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」では、戸建住宅を含む全ての建築物の省エネ適合義務化・基準引き上げ、2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電設置を目指すこと、住宅・建築物の木造化・木質化の取組を進めること等が、8月23日にとりまとめられ公表されました。11月に英国グラスゴーで開催されるCOP26に向けて準備が加速しています。皆様にタイムリーな情報提供をしていきたいと考えております。

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会:
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/
中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会・ 産業構造審議会
産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG 合同会合:
http://www.env.go.jp/council/06earth/yoshi06-20.html
脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000188.html

 
田辺 新一
会長 田辺新一(早稲田大学教授)
 8月23日(前夜祭)~25日にグローバル化人材育成プログラム2021を開催しました。この行事は、中島正愛会長(当時)が、グローバルに活躍しようという建築系学生を後押ししようとの熱い想いで始めた行事で、国際・情報担当副会長が運営責任者として、松村秀一副会長(当時)、竹内徹副会長(当時)と引き継がれてきました。
 例年は建築会館ホールに集まっての対面行事ですが、今年度は昨年度に続きコロナ感染対策のためオンライン開催となりました。教員推薦を受けた学生31名と企業・大学のメンター15名が6班に分かれて、4名の講師(①建築デザイン:日建設計・山梨知彦氏、②建築施工:清水建設・沖和之氏、③環境エンジニアリング:竹中工務店・伊勢田元氏、④都市・開発:納屋・大村紋子氏)による講義1時間、講師が出題した課題の作成1時間、各班からの発表と講評を2日間にわたり行いました。全国から集まった意欲的な学生の皆さんは、学生同士、メンター・特別ゲスト(中島正愛元会長、松村秀一元副会長、竹内徹元副会長、権藤智之元メンター)との交流を通じてグローバルな活躍の具体的なイメージをもってくれたのではないかと思います。来年度こそ建築会館ホールでの対面行事に戻したいと思います。

 
伊香賀 俊治
副会長 伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)
 先日、野口貴文副会長よりお声がけ頂き「カーボンニュートラル社会に向けた建築設計のあり方」というテーマで、対談の機会を得ました。対談で気づかされたのは、今までどちらかというと設計者は、運用後のCO2削減に寄与する設計については注力していましたが、建設時のCO2削減には少し関心が薄かったのではないか、ということです。LCCでは建設・運用全体を見渡していましたが、LCCO2については少し異なる対応だったように思います。もちろん多くの設計者が、木造でできるものは木造で考えるというトライをし続けています。これは大事な姿勢ですが、木造で無理があるものも相当あります。これにトライし続けるというのも大事なことですが、一方コンクリートがなくなるわけではありません。野口先生の「コンクリートを利用してCO2を循環させていく」というお考えには正に目から鱗でした。対談でも触れていますが、今後設計におけるCO2とBIMのひもづけが重要になってくると思います。対談の模様は
https://bit.ly/3BOowdZ

 
福田 卓司
副会長 福田卓司(㈱日本設計取締役副社長執行役員)
 9月は日本建築学会大会の開催月です。主幹校の先生方、また様々な企画に関わっておられる皆様におかれましては、プログラムの編成から情報のアップと整理、その他もろもろで、大変お忙しいことと思います。執行部の一員として、深く感謝申し上げます。バーチャル懇親会、研究会、研究発表と、趣向を凝らした企画が盛り沢山ですので、私も迷子にならないように気を付けつつ、電子空間を渉猟して学びを深めたいと思います。通常ですとこの後、
 「会場で見かけたら声をかけてください...」と続く所でしょうが、今回はちょっと勝手が違いますね。会場やその後の飲み屋さんで、「お久しぶりです」「今、何してんの」「〇〇です」「そうか、頑張ってるね。今こんなことしてるんだけど興味ある...」、といった出会いが、これまではあちこちに展開していたはずです。もちろん、研究発表の現場でも同様に。
 〈電子空間における創発的でアドホックな出会いいかに創出できる/すべきなのか?〉
 電子空間に関するこの問いは、「実空間」の専門家である我々にも無縁ではないはずです。今回の大会を皆さんと一緒にこれを考える機会にしたいとも思っております。
 「電子空間で見かけられましたら、ぜひ声をかけてやってください:笑。」

 
小野田 泰明
副会長 小野田泰明(東北大学教授)
 毎日、ACI(American Concrete Institute)からConcrete SmartBriefという情報が届きます。コンクリートに関する様々な情報(秀逸なコンクリート造建築物、新しいコンクリートの開発、コンクリートに関わる新たな現象の解明など)が配信されてきますが、ここ1年間は、ほぼ毎日のようにコンクリートにおける脱炭素や炭素利用に関わる内容が含まれています。最近その中で、二酸化炭素(CO2)の化合物・鉱物への吸収利用(CCU)技術として最も実効的であるのはコンクリートとしての利用である、ということが示されていました(https://www.fastcompany.com/90669645/good-news-the-most-popular-material-on-earth-is-great-for-storing-co2)。なぜでしょう?CO2は安定した構造であるため、それを別のものに変化させるにはエネルギーが必要となります。吸収するCO2よりもエネルギー消費によって排出されるCO2が上回ってしまっては、意味がありません。しかし、皆様もご存じのように、コンクリートはCO2の影響で中性化していきます。すなわち、CO2はコンクリート中のカルシウム(Ca)と反応して、地球上でより安定した状態にある炭酸カルシウム(CaCO3)へと変化していくのです。この現象をうまく利用することで、コンクリートは木材と並ぶカーボンニュートラルな建築材料へと変わっていくことができると言えます。先日、福田卓司副会長と、建築設計における脱炭素の方向性について対談をさせていただきました。ZEBの実現を始めとして、脱炭素とBIMとの連携など、最新の情報をご紹介をいただき、私からはコンクリート利用によるZEBの更なる推進をご提案申し上げました。
 対談の模様は、https://rrcs-association.or.jp/dialogs/21830.htmlでご覧いただけます。

 
野口 貴文
副会長 野口貴文(東京大学教授)
 昨今の環境ブームに乗って「ESG投資」という言葉がよく使われるが、ESG投資とは社会の要請に配慮した投資をすべきという考えで、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する方法である。しかし実態としては判断基準が「CO2」に偏重しており、おのずと「石炭火力発電パッシング」になってしまっている。半面この脱炭素に向けた対策として創エネの中に太陽光発電や風力発電を奨励している。これらは希少金属のレアアースを多く使っている。多結晶シリコン同様環境規制が緩い国が独占的に生産しまた新疆ウイグル自治区では長年、強制的な中国語や中国文化の習得が行われ、綿花栽培などで強制労働が実施されているが、こうした人権問題もこれらの製品に使われているようだ。社会やガバナンスにも目を向け食物の原産地表示のようにその製造過程をも表示させる必要があるだろう。

 
田名網 雅人
副会長 田名網雅人(鹿島建設㈱常務執行役員建築設計本部副本部長)


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