第3回 会長・副会長からの近況報告(メルマガ)(2021年8月3日配信)

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 皆様の会員証の裏面に本会の倫理綱領が書かれていることをご存じでしょうか。次のような崇高な文章が示されています。

   日本建築学会は
   それぞれの地域における
   固有の歴史と伝統と文化を尊重し
   地球規模の自然環境と
   培った知恵と技術を共生させ
   豊かな人間生活の基盤となる
   建築の社会的役割と責任を自覚し
   人々に貢献することを使命とする

 倫理綱領と行動規範は、尾島会長時代に倫理綱領・行動規範(案)を策定し、パブコメを経て、岡田会長時代の1999年5月31日の通常総会にて承認され、6月1日から施行されています。その後、行動規範の一部が2004年に改訂され、現在に至っています。
 倫理委員会(委員長:平田京子・日本女子大学教授)が倫理綱領・行動規範の策定と改訂、教材開発、教科書発刊、教育研修プログラム開発、建築倫理に関する討論などの活動を行っています。例えば、建築倫理用教教材、日本建築学会の技術者倫理教材、建築事故事例公開、WEBラーニング倫理教材、倫理教育プログラム開発のためのガイドブック、教育ツールなどが成果としてあります。現在、建築倫理セミナーが約二ヶ月毎に開催されています。本年度の第1回は7月28日に開催されました。
 倫理委員会の皆様と7月29日に懇談させて頂きました。現在、倫理綱領・行動規範パンフレットを作成中であると伺いました。新しい生活様式、脱炭素社会、多様性(ダイバーシティー)、SDGsに関しても盛り込まれる予定とのことです。会員の皆様へ早く公開されるように支援をしたいと考えています。
倫理委員会の活動は学会HP https://www.aij.or.jp/jpn/comm/rinri/ から閲覧できます。
 また、建築倫理セミナーに関しては、学会HP催し物・公募一覧のタグで逐次知らされる予定です。
 
田辺 新一
会長 田辺新一(早稲田大学教授)
 東京の熱帯夜日数は、60年前の5日間からいまや40日間を超え、赤道直下の熱帯地域よりも蒸し暑いと言われるほどになりました。熱中症救急搬送も毎年5万人を超えています。総務省消防庁1)によれば、7月25日までの直近1週間だけで熱中症救急搬送患者は8,122人に上り、前年同時期の2.2倍です。また、6月1日以降の8週間ですでに20,870人に達し、前年同時期の1.7倍です。しかも熱中症の4割は住居内で発生し、そのほとんどが高齢者です。今年は、長期に及ぶCOVID-19対策のため高齢者の外出や運動機会(筋力、発汗能力)が減り、室内熱中症への一層の注意が必要です。住宅内熱中症は、断熱・日射遮蔽性能の改善と適切な冷房運転など、住まいと住まい方の改善によって予防が可能2)で、住まいと住まい方の脱炭素対策とも両立します。日本建築学会気候非常事態宣言(2021年1月20日)の展開として、脱炭素都市・建築タスクフォースでも検討したいと思います。
1)総務省消防庁 熱中症救急搬送状況(2021年7月27日発表)
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
2)伊香賀俊治:夏季の室内熱中症を予防する住まいと住まい方、連載「健康に住み続けられる住まい入門」(第6回)、(公財)健康・体力づくり事業財団機関誌2020年9月号、p.8
http://www.health-net.or.jp/syuppan/kenkozukuri/saishin_pdf/kenkozukuri202009.pdf

 
伊香賀 俊治
副会長 伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)
 改正意匠法施行から一年、多くの登録があり、個別の案件について物議を醸しているのを耳にされているかもしれません。建築五会の内、主に日本建築士連合会、日本建築家協会、日本建築士事務所協会連合会が中心になって、意見交換を重ねているようです。登録されたものを見ると、これが意匠権をもってしまうのか?これは他のビルディングタイプではすでに存在するし、むしろみんなで共有して行くべき計画手法では?など様々な疑問が湧いてくるのも事実です。ただ、個別の事象に疑義を出していても始まらない所があります。課題がどこにあるのか、どうすればより良い運用がされるようになるか等、議論の輪を拡げていくことが大切であると思っています。
 
福田 卓司
副会長 福田卓司(㈱日本設計取締役副社長執行役員)
 オリンピックの間、コロナの感染者数が早いペースで増えているようです。事象が複雑なので、安易なコメントは差し控えたいと思いますが、理性的で科学的な態度の共有が、全体に進んでいないように思われるのが気がかりです。
 東日本大震災の直後にも同じようなことがあったことを思い出します。「実装」に責任を持たない言い切り型の心地よい意見が蔓延する中、テーブルの上で耳に痛い事象も含めて共有し、それを能力に応じて関係者が引き受けていくことを行ったコミュニティと、それが出来なかった所では、その後の復興の質にも差が生まれているように思います。この差が何に起因するのか、現在も探求が続けられていますが、相互の信頼が大きく関係しているように個人的には感じています。潔癖症的な炎上圧がかかり科学や合理がなおざりにされがちな環境下では、短期的には厳しくとも長期的には実のある選択が難しくなりがちです。
 こういう時こそ、日本建築学会のような学術団体の役割は大きいのかもしれません。本会が設けた「ウイズ/アフターコロナに適応する建築・都市に関する特別調査委員会」の活動も本格化しているようです。成果をしっかりと共有していきたいと思います。
 
小野田 泰明
副会長 小野田泰明(東北大学教授)
 2020東京オリンピックは、連日、猛暑の中で開催されていますが、各国の選手達はこの過酷な環境にも耐え、連日、感動を与える素晴らしい活躍を私たちに届けてくれています。2013年に立候補した当時、東京の気候は「温暖」だったのでしょうか。当時も東京の猛暑日は12日あり、とても温暖とは言えなかったようです。2052年のオリンピックがどこで開催されるかはわかりませんが、2050年にカーボンニュートラル社会が構築できていなければ、真夏の開催は無理でしょう。各業界でカーボンニュートラル化の取り組みが必死に進められています。1回きりとか一方通行とかのカーボンニュートラル化ではなく、持続的なカーボンニュートラル化が必要であると思います。なぜならば、地球上の全ての物質は循環しているからで、その循環が自然界の速度を逸脱してしまったために地球温暖化が生じてしまったからです。建築物の寿命は50~100年以上ですが、カーボンニュートラル化においても、物質循環を踏まえた方向性を示すことが重要ではないかと思います。
 
野口 貴文
副会長 野口貴文(東京大学教授)
 異常気象の一つが、梅雨前線などにより、夏季を中心として集中豪雨の被害が目立つようになった「ゲリラ豪雨」。予測困難で突然発生し、局地的であること、同時多発するということがその語源といわれている。
 発生のメカニズムとしては、上空に入った冷たい空気と上昇した地表付近の湿った暖かい空気が混ざることで積乱雲が発達し、大気の状態が不安定になり局地的な大雨をもたらすもので近年その雨量の量が想定外に増えている。短時間に相当量の雨量が降るため、建物の被害も起きてきており雨量の計算基準も見直さざる負えなくなった。これも地球温暖化の影響だと言える。
 
田名網 雅人
副会長 田名網雅人(鹿島建設㈱常務執行役員建築設計本部副本部長)


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