第2回 会長・副会長からの近況報告(メルマガ)(2021年7月6日配信)
- 毎月1回のペースで、会員の皆さまに会長・副会長からの近況報告をメールマガジン形式でお届けいたします。
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今年は梅雨らしくない天気が続いていましたが、7月に入って豪雨が日本各地を襲っています。地球温暖化の影響でしょうか、私が若い時と比較しても激しさが増しているように思います。熱海市では大規模な土石流が発生し、多くの犠牲者が出ています。心よりお見舞い申し上げます。日本学術会議・土木工学・建築学委員会の気候変動と国土分科会が2020年6月17日に「低平地等の水災害激甚化に対応した適応策推進上の重要課題」という提言を発出しています。その中で、「水災害による建築物の損傷の程度は生死や被災後の復旧・復興に大きく影響する。米国では浸水を防ぐ建築技術と、浸水は許容するが復旧しやすい建築技術のそれぞれに関する技術基準がすでに整備されているが、我が国では未着手に近い状況にある。このため、研究者及び技術者は、国土交通省や関連企業等の支援を受け、日本建築学会をかなめとして耐水性建築技術の確立に向けた研究を急ぐべきである。」と書かれています。激甚化する複合災害には土木的な対応だけではなく、建築そのものの機能も求められるということだと理解しています。本会での活動も加速する必要があります。ところで、皆様は4月から、いわゆる黄表紙といわれる日本建築学会計画系論文集、構造系論文集、環境系論文集と技術報告集が発行されたら直ぐに無料で読むことが出来ることをご存じでしょうか。これまで、論文会員になると、冊子体で郵送されてきました。冊子が廃止され、電子化されました。会員以外の方も含めて最新号を無料で読むことが出来ます。黄表紙、技術報告集の論文は建築分野の学術の宝です。是非、閲覧して頂くとともに、投稿もお願い申し上げます。
日本学術会議、低平地等の水災害激甚化に対応した適応策推進上の重要課題、2020年6月17日、
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t290-1.pdf
日本建築学会構造系論文集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/aijs/list/-char/ja
日本建築学会計画系論文集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/aija/list/-char/ja
日本建築学会環境系論文集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/aije/list/-char/ja
日本建築学会技術報告集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/aijt/list/-char/ja
会長 田辺新一(早稲田大学教授)
設計プロポーザル、事業コンペ、補助金、競争的研究資金などの応募時に持続可能な開発目標(SDGs)に関する具体的な提案が求められるようになったと実感する会員が多いのではないでしょうか。建築環境総合性能評価システムCASBEE-戸建/建築/不動産(2020年SDG試行版)(https://www.ibec.or.jp/CASBEE/CASBEE_opinion/index.html)に続いて、今月中旬には2021年SDGs対応版が公開予定で、会員各位の日常業務におけるSDGs対応は避けて通れなくなりつつあります。一方、これらの動きから取り残されている会員も多く、会員間の情報格差が広がっているように思います。
9月9日午後にWeb開催される大会総合学術研究協議会「建築学会SDGs宣言とアクション」では、大会学術講演会および建築デザイン発表会の投稿時の会員各位のSDGs取り組み状況も含めてSDGsアクションを議論しますので、是非ご参加いただければ幸いです。
副会長 伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)
熱海伊豆山地区で大規模な土石流災害が発生しました。毎年のように特定の地域に大雨が降り、これによる大規模な災害が発生しています。私事ではありますが、7年前に広島で起きた土砂災害は私の実家の裏山の尾根を越えた反対側でしたし、3年前の倉敷の大規模冠水は祖父母の実家の近郊でした。伊豆山地区は土石流や地すべりの警戒区域になっていましたが、さらに開発の盛り土が災害を広げたのではないか等、いくつか原因について論が交わされています。分析は今後進んでいくと思われますが、それにしても何ともやりきれない気持ちです。依然として多くの方の安否が確認できない状態です。お一人でも多くの方の生存を心よりお祈りいたします。
副会長 福田卓司(㈱日本設計取締役副社長執行役員)
災害が頻発しておりますが、関係者の皆様には謹んでお見舞い申し上げます。東日本大震災でも実感しましたが、建築・土木・都市計画などの専門区分を忖度しない自然災害には、関係資源を繋いだネットワークが肝となります。7月は豪雨の季節で、3年前には西日本豪雨災害が起こっています。この被災地のひとつ広島県熊野町に、先ごろ防災拠点がオープンしました。基礎自治体、地域コミュニティ、建築家、広大防災・減災研究センター、広島県が一体となったプロセスにより、防災ネットワークのハブとなる施設です。こうした真摯な取り組みを、学術的知見として海外にも発信していきたいものですね。
そうした矢先、本会の国際学術誌JAABEのインパクトファクターが大きく伸びたニュースが入ってきました。先達が開拓されたこのジャーナル、日本からの投稿が近年伸び悩んでもおりますが、皆様の積極的な投稿で盛り上げてやって下さい。
Journal of Asian Architecture and Building Engineering https://www.tandfonline.com/toc/tabe20/current
副会長 小野田泰明(東北大学教授)
日本の雨には400種類以上もの呼び名があるようですね。いずれも情緒あふれるものばかりで、紅雨、緑雨、白雨、霧雨、時雨、驟雨、村雨、宿雨、霖雨、慈雨、鬼雨など、雨の降る時期、降り方、情景に応じて命名されています。しかし、最近の雨は、情緒を云々言えるものは稀で、激甚災害に結び付くことが懸念されてしまうものばかりのように感じられます。梅雨時、しとしとと降り続く雨に鬱陶しさを感じながらも木々や草花の緑が生えていく様子に心が落ち着かされたのは、遠い昔。この激甚災害は果たして自然災害なのでしょうか。そうでないとすれば、我々にできることは何でしょう。対策強化と災害激化との鼬ごっこは、早く終わりにしたいものです。
副会長 野口貴文(東京大学教授)
コロナ禍の中オフィスは今後どうなるのかの議論がされています。コロナで在宅勤務が加速し停滞していたWEB利用も同様に加速しました。一度高まった在宅勤務がこのまま定着するのでしょうか。しかしながら同時にリアルで打ち合わせることの重要性も再認識されました。人と人が直接会い議論することで新たな発想が生まれることで重要な価値を生むことに気づかされます。大きな流れの中でサテライトオフィスは続々増えるものと思われますが、一方本社のオフォスの重要性はさらに増しABW(アクティブ・ベースド・ワーキング)とウェルネスオフィスの流れの中で多様な働き方を求める動きはさらに加速するでしょう。こうした観点で見るとオフィスが消えることはないと思えます。
副会長 田名網雅人(鹿島建設㈱常務執行役員建築設計本部副本部長)