本会では、鋼構造に関する規準を1941年に『鉄骨構造計算規準(案)』として発表以来、『各種構造計算規準』(1947年)、『鋼構造計算規準・同解説』(1950年)、『鋼構造設計規準』(1970年)を経た後、35年振りに『鋼構造設計規準 ―許容応力度設計法』(2005年)として改定しました。それから14年が経過し、今回新たに『鋼構造許容応力度設計規準』と改称のうえ刊行することになりました。書名は変更しますが、内容は前書を踏襲しており改定版の位置づけです。
1970年に『鋼構造設計規準』を刊行した当時から、建築物の設計に関する状況は変化しています。最も大きな変化として、建築基準法・施行令における耐震設計関連の改正が挙げられます。この間、『鋼構造塑性設計指針』『鋼構造限界状態設計指針・同解説』などを取りまとめ、『鋼構造設計規準』を補足する形で設計要件の発展に対応してきました。同規準が鋼構造の設計法全般でなく、限られた範囲についてしか触れられていない規準になっているとの認識のもと、2005年改定の際には『鋼構造設計規準 ―許容応力度設計法』と副題を付与しました。そして、許容応力度設計法による鋼構造の設計規準であることをより明快にするために、このたび『鋼構造許容応力度設計規準』と改称するものです。これにより、本規準と『鋼構造塑性設計指針』『鋼構造限界状態設計指針・同解説』の三書は並立の関係であり、設計法ごとに規準・指針を設けていることが書名からも分かるようになります。 今回、「鋼構造関連規準・指針の英文化小委員会」の活動が契機のひとつになっています。『鋼構造設計規準 ―許容応力度設計法』の我が国での位置づけが、鋼構造関連規準・指針類の構成や枠組みの中で明確になっていないと、英訳して国際社会に提示する意義が半減するとの指摘を受けました。ほかにも、時代に合わなくなった内容や表現に関する指摘も多く挙げられました。これらについて、国内外の規準と比較検討のうえ見直しました。 また、本会のデジタルアーカイブスの充実により、過去に刊行された規準・指針類の内容を容易に検索できる環境になり、今日までに至る経緯を必ずしも本規準で提示する必然性がなくなりました。このことから、過去においては汎用されていたが今はほとんど用いられない稀有な構造形式、例えばリベットによる接合やプレートとアングルによる組立部材などについては、記述を必要最小限にとどめました。一方、最近よく用いられる構造形式が前面に出るように各章・節内の構成順と図を見直して、実用的に頻度や重要度の高いものを優先してより具体的に記述するようにしました。材料に関しても、JIS規格材のみに限らず、広く用いられている国土交通大臣認定品についても、本規準が適用できることを記述しました。 本文・解説の構成では、 8章から10章の順番を入れ替えて部材に関する事項をまとめました。「4章 材料」では、本規準に対応する材料の範囲を広げ、解説を設けました。3章・7章・10章はより適切な章題に改めました。 現在、2019年秋の刊行を目指して専門家によるレビューを行っておりますが、会員のみなさまにもお目通しいただき、ご意見をうかがうことになりました。ぜひ、多角的な観点から建設的なコメントをお寄せください。なお、ご意見は日本建築学会会員番号・氏名を明記のうえ、下記 2名宛にEメールでお送りください。 |
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日本建築学会 構造委員会 鋼構造運営委員会 鋼構造設計規準改定小委員会 |
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