市民のための耐震工学講座 3. 地震について 発生のメカニズムおよび性質 私達が暮らしている地球の内部は現在も活動していています。その活動で内部のマントルが,表面に押し出されて冷えると,プレートと呼ばれる岩盤ができます(図2)。
プレートは1年に数cmの速度で動き,ある所でもぐってマントル内に消えていきます。私達が住んでいる陸地はプレート上にありますが,プレートは地球の表面に図3のように分布しています。
プレートは常に動いているので,プレートがググッともぐる所の近くではその動きによるエネルギーがたまります。そして,エネルギーがある程度までたまると解放される必要が出てきます。エネルギーの解放は,ある範囲の場所が急激にずれて動くことで行われます。その解放されたエネルギーによって地震波が発生して,地盤を通って地上に達すると,地表がゆれて私達は「地震」を感じます。この地震エネルギーの解放が始まる場所を「震源」,震源の真上の地表を「震央」つまり地震の中央と呼びます。ですから,プレートの分布図と震源の分布図(図4)を比べて見ると分かるように,プレートの境界と地震の多発地帯はほぼ一致します。 このエネルギーの解放,つまり地震の起こり方は大きく3つあります。下にもぐるプレートと上になるプレートの境界で起こる地震,下にもぐるプレート内で起こる地震,上になるプレート内で起こる地震,です。
もぐるプレートと上になるプレートの境界で起こる地震は図5のようにして起こり,大地震を周期的に発生させます(1923年の関東地震,1968年の十勝沖地震など)。もぐるプレートもしくは上になるプレートで起こる地震は図6のような場所で起こります。このうち,もぐるプレートで起こる地震は深い場所で起こるため地表での被害は一般的にそれほど大きくなりません(1993年の釧路沖地震など)。上になるプレートで起こる地震は,その上に陸地があると内陸の直下で起こることになります。そうなると他の型の地慶よりも地表近くで起こることとなり,大きな被害をもたらすことになります(1891年の濃尾地震,1948年の福井地震など)。
今回の地震は上になるプレートで起った地震で,「活断層」で起きました。つまり,活断層という地殻の弱い部分がずれることによってエネルギーが,解放されて地震が起こったのです。 活断層については性質や分布がある程度分かっています。しかし,活断層による地震の周期は短くて数百年,長くて数十万年なので,他の地震と同じくいつ起こるかを正確に予測することはできません。写真1は今回の地震で出来た断層です。
地震についてのテレビや新聞の報道では,「マグニチュード」と「震度」が使われます。マグニチュード(Mで表す)は震源で地震が,放出する工ネルギーの大きさを表し,値が1違うとエネルギーにしておよそ30倍違います。関東地震はM7.9で,M7.4はおよそ水素爆弾一個のエネルギーにそれぞれ相当します。 震度は,地表における揺れの強さの程度を表す物差しです。震度を表すには震度階が使われていて,日本では気象庁で決めた10階級の震度階が使われています。 地震の歴史とその周辺 こわい物4つ「地震・雷・火事・親父」の一番初めに挙げられているほどに,地震は昔から日本人にとって身近な出来事でした。 では,明治以降に日本で起きた地震の歴史などを見ていきながら,地震に対する建築のあり方も追ってみることにします。
|