市民のための耐震工学講座 15. 火災災害 今回の地震では火事が多発しました。焼失範囲は全体で100へクタールで,地震で亡くなった方の10%が焼死ということです。
出火原因 一つ目はガスです。地震が,起きたのは早朝ですが,起きて活動している人はいて,火を使っている人もいます。そこに地震が起こって,火を消せなかったり,火を使っていたことを忘れて火を消さなかったために,火が出たと考えられます。そのほかにも,折れたガス管から漏れたガスに何らかの火が引火したことも考えられます。 火事の原因のもう一つは電気です。これは電気復旧後の火事の多発でよく分かります。今回の地震は一月に起こりましたから,寒くて電気ストーブなどを使っていた家庭は少なくありません。その電気ストーブなどが地震で倒れ,電気が復旧したときに家具やカーぺットなどに火をつけたことが考えられます。また,地震で切断された電気コードがカーぺットなどに火をつけたことも考えられます。 火災拡大の要因 まず,「燃えを助長した原因」です。 火災の同時多発 大規模火災が多発したため(図45),公設の消防施設だけでは対応し切れませんでした。
木造家屋の密集 大火の発生した地区の多くは戦災を免れた場所で,復興区画整理がなされていませんでした。そのため,建物の間の平均が2m未満という超過密地帯となり,火事が拡大しやすくなっていました。 燃えたた木造建物 木造建築は材料が木で燃えやすいため,火が着かないように外表面は燃えにくい材料を使っています。しかし,地震で倒れたりして材料がはがれると木材がむき出しになります(写真64)。すると,そこに他の所から火が燃え移る危険性が出てきます。外装がきちんと出来ていれ火が燃え移るのを防ぐことは出来るのです(写真65)。
燃えた耐火造 耐火造とは,建物の構造部分が火災時の加熱に所定の時間以上耐えられるようにつくられている建物のことです。鉄筋コンクリート造の建物などがそうです。しかし,耐火造でもこわれると内部に他から火がつきます。また,耐火造の建物の中で激しく燃えた火が火の粉をまき散らしながら他の建物に広がった場合もあるようです。
ガス漏れの多発 地震の揺れや建物の倒壊でこわれたガス管からガスがもれても,修理するどころではありませんでした。そこに他の所から火が移ってきて,漏れているガスに更に引火することになり,火が広がっていきました。
交通の渋滞 道路が渋滞して,消防車が火事の現場に急行することができませんでした(写真67)。渋滞の原因となった車の種類は色々あります。到れた高速道路から移動してきた車。被災した人の安否を確認する車。被災した交通機関の代わりの移動手段。この渋滞によって,他の場所からの救援も大幅に遅れることとなりました。今回の震災では,色々な意味で災害時の交通規制の問題が浮き彫りになりました。
建物の倒れ込み 建物が倒れると,幹線道路がふさがれたり,もともと狭い道路がさらに狭くなったりします(写真68)。そのために,消防車が火事の現場に着くのが遅れたり,火事の現場に近づけなかったりして,火事の被害が広がりました。
救助活動の優先 木造家屋などの下敷きになっている人などを助ける人命救助が優先されました。そのために,火事を小さいうちに消すことができず,小さな火が大きくなってしまったことが考えられます。しかし,どちらを優先するべきかは難しい問題です。 消防水利の欠如 地震によって多くの消火栓はこわれ,通常でも少ない防火水漕はこわれてしまい,ほとんど水がない状態でした。川の水やプールの水を使って消火したのですが,焼け石に水でした。 火災の拡大を防いだ要因 市民消防活動 火災がひどかった地区の中でも,周辺の地域と比べて火事の被害が少なかった地域もありました。それは,住民参加によるまちづくりが盛んで,日頃から消防対策がとられていたからです。 耐火造 耐火造が火の手を阻んでいる例が見られました(写真69,70)。しかし,耐火造はきちんとつくらないと,内部で火を育てて被害を拡大させる要因にもなり得ます。
緑地とオープンスペース 今回の地震にともなう火事でも,樹木によって火が止められている事例がありました(写真71)。また,小さいながら樹木のある公園が火を止めている例も見られました。
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