都市の風環境予測のためのCFDガイドブック

Guidebook for CFD Predictions
of Urban Wind Environment



日本建築学会
Architectural Institute of Japan
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本書の目的

コンピュータの高速化および流体解析ソフトの普及に伴い,CFD(Computational Fluid Dynamics: 数値流体力学)は,流体力学の強力な解析ツールとして,工学の様々な分野で用いられるようになってきた. CFDに限らず,数値シミュレーションを利用するにあたって最も重要なのは,解析結果の信頼性の確保である. そのためのアプローチとして近年,適用分野ごとにガイドライン(Best Practice Guidelines)の作成や学会,学術雑誌等の単位で検証(Verification and Validation: V&V)プロセスの標準化等が進められている.
  日本建築学会では,1997年度に環境工学委員会・空気環境小委員会に「風環境数値計算WG」という名称でワーキンググループが発足し,その後「流体数値計算による風環境評価ガイドライン検討WG(2001〜2002)」 「流体数値計算による風環境評価ガイドライン作成WG(2003〜2004)」と名称の変更を経ながら,風環境の予測に流体数値解析を適切に利用するためのガイドラインの作成が進められた. そして2007年,市街地風環境の予測に流体数値解析を適切に利用するための注意点や解析精度の検証方法について解説したガイドブック「市街地風環境予測のための流体数値解析ガイドブック―ガイドラインと検証用データベース―」が刊行された[1, 2, 20, 21]. 同ガイドブックの特徴としては,各種の建物形状を対象としたベンチマークテストに基づいて,ガイドラインが策定され,検証用のデータベースを併せて用意した点が挙げられる. 幸いにして,本ガイドブックは国内外で大きな反響を得ることができ,また同ガイドラインにおいて利用を推奨している実験データベース(本ページ)に関しては,開設以来1万アクセスを超え,国内外の多数の論文でCFD検証用データとして利用されている.
  しかしながら,この2007年版では,LES (Large-Eddy Simualtion)の風環境問題への適用や濃度・温度などの拡散問題については,ほとんど触れられていないため,最近のユーザの関心の高まりを踏まえ,これらについての記述を充実させるとともに,ガイドラインの適用範囲を拡張する必要性が生じた. また,商用コードやオープンソースコードの普及に伴い,採用されている代表的な境界条件等の式やその意味を解説した分かりやすいガイドブックの需要も高まっている. 上記の点を踏まえ,最新の国内外の研究動向を反映させた新しい都市の風環境予測のための新しいCFD適用ガイドラインの策定,およびガイドブックの編纂が必要と考え,本書をまとめるに至った.
  本書は,序章に続き以下の4編で構成されている.すなわち「第1編 都市の風環境予測のための基礎知識」「第2編 都市の風環境予測のためのCFD解析技術」「第3編 都市の風環境予測のためのCFD適用ガイドライン」「資料編 CFD解析の精度検証のための実験データベース」である. 第1編では,都市の風環境のCFD解析を行う上で,知っておいてほしい基礎的事項を整理する.第2編では,市街地風環境の予測と評価を行う場合に必要とされるCFD解析技術について概説している. なお本書は,CFD解析一般を対象とした解説書は意図していないため,風環境の予測・評価に必要と思われる範囲に主眼を置いている. CFD解析手法についてのより詳しい解説は,数多く出版されているCFD解析の専門書に譲りたいと考えている. 第3編では,筆者らが実施してきたベンチマークテストの結果やその他既往の文献などに基づき,市街地風環境の予測・評価にCFD解析を適切に利用するための留意点をガイドラインとしてまとめている.
  資料編で示されているCFD解析の精度検証に用いることができる実験データベースは本ページよりダウンロード可能である.読者が自らの解析コードの精度を確認したり,設定条件の妥当性を検証したりする際にぜひとも利用していただきたい.

ガイドブックの購入

本書「都市の風環境予測のためのCFDガイドブック」は以下の学会HPより購入することができます.
https://www.aij.or.jp/books/productId/625375/

検証用データベース

単体建物から実在市街地,樹木までの計13種類のテストケースを対象とした風洞実験・実測結果が検証用データベースとして整備されている. これらの結果はCFDコードのチェックやCFD初心者が最初に取り組む例題として,大いに活用していただけるものと考えている. 詳細につきましては,ガイドブックを参照されたい。

なお2007年度版ガイドブックで実施されたベンチマークテスト結果(Case A〜G)については,現在、英文版を以下でダウンロード購入することが可能である.
http://www.aij.or.jp/eng/publish/index_ddonly.htm

以下は、ベンチマークテストの計算を行うために必要な境界条件や実験結果が記載されたデータファイルである(エクセル形式).また複雑な市街地形状を対象としたCase D〜Fについては,市街地形状のCADデータも用意されている. 自由にダウンロードしていただけるが,論文等で計算結果との比較を公表される際には,本データベースを利用した旨を必ず明記して頂きたい.

test case dataset ガイドブックの
参照ページ
参考
文献
A 1:1:2 角柱周辺流れ
(1:1:2 shape building model)
Data file : CaseA(1_1_2).xls P161 [3]
B 1:4:4 角柱周辺流れ
(1:4:4 shape building model)
Data file : CaseB(1_4_4).xls P162 [5]
C 単純建物群モデル
(Simple building blocks)
Data file : CaseC(City_blocks).xls P164 [6]
D 街区内に建つ高層建物モデル
(A high-rise building in city blocks)
Data file : CaseD(Highrise+Blocks).xls
CAD File(DXF) : CaseD_dxf.zip
CAD File(MCD) : CaseD_mcd.zip
P166 [16]
E 新潟市内低層建物密集地 (Building complexes with simple building shape in actual urban area (Niigata)) Data file : CaseE(Niigata).xls
CAD File(DXF) : CaseE_dxf.zip
CAD File(MCD) : CaseE_mcd.zip
P169 -
F 新宿副都心高層ビル群 (Building complexes with complicated building shape in actual urban area (Shinjuku)) Data file : CaseF(Shinjuku).xls
CAD File(DXF) : CaseF_dxf.zip
CAD File(MCD) : CaseF_mcd.zip
CAD File(STL)* : CaseF_stl.zip

*STLファイルは円筒状の解析領域になっており、一部の市街地形状が簡略化されています。
P173 [7][8]
G 樹木周辺の流れ (Two-dimensional pine tree) Data file : CaseG(Tree).xls P177 [9]
H 1:1:2角柱モデル
周辺の流れと拡散
(1:1:2 shape building model with dispersion)
Data file : CaseH(Iso_1_1_2).xlsx P178 [10]
I 立方体モデル
周辺の流れと拡散
 (A cubic building model with dispersion)
Data file : CaseI(Cube_AIST).xlsx P180 [11][12]
J 非等温流れ場における1:1:2角柱モデル周辺の流れと拡散 (1:1:2 shape building model with dispersion in Non-isothermal flow) Data file : CaseJ(NonIso_1_1_2).xlsx P182 [10]
K 立方体群街区モデル内の流れと点源からの拡散 (Cube arrays with point-source dispersion) Data file : CaseK(Arrays).xlsx P185 -
L 非等温流れ場における立方体群街区モデル内の流れと線源からの拡散 (Cube arrays with line-source dispersion in non-isothermal flow) Data file : CaseL(NonIso_Arrays).xlsx P186 [13]
M 建物群(東京工芸大学キャンパスモデル)を対象とした流れと拡散 (Campus building model with dispersion (TPU)) 準備中 P189 [14][15][16]

流入変動風

本検証用データベースの実験のCase H,Case K,Case Mを対象にLES解析を行う場合に使用可能な流入変動風のストックデータを以下からダウンロード可能である. 本流入変動風データは,実験を実施した風洞内のスパイヤやラフネスブロックを再現したLES解析を別途行って作成したものである[17-19].
     使用上の留意点は,本資料を参照のこと.

http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.001
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.002
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.003
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.004
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.005
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.006
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.007
http://news-sv.aij.or.jp/kankyo/s35/data/20200130/inflow.7z.008
(7zip形式で圧縮され,8つのファイルに分割されています)

1月30日〜2月10までにダウンロードされた方は、ファイルに不具合がありましたので、再度ダウンロードして頂きますようお願いします.


参考文献

[1] 日本建築学会, 2007. 市街地風環境予測のための流体数値解析ガイドブック―ガイドラインと検証用データベース―. 日本建築学会.

[2] Architectural Institute of Japan, 2016. AIJ Benchmarks for Validation of CFD Simulations Applied to Pedestrian Wind Environment around Buildings. Architectural Institute of Japan. ISBN978-4-8189-5001-6.  https://www.aij.or.jp/eng/publish/index_ddonly.htm

[3] 孟岩, 日比一喜, 1998. 高層建物周辺の流れ場の乱流計測. 日本風工学会誌, 76, 55-64.  https://doi.org/10.5359/jawe.1998.76_55

[4] Uehara, K., Wakamatsu, S., Ooka, R., 2003. Studies on critical Reynolds number indices for wind-tunnel experiments on flow within urban areas. Bound.-Layer Meteor. 107, 353-370.  https://link.springer.com/article/10.1023/A:1022162807729

[5] 宮崎司, 富永禎秀, 2003. 境界層流中に建つ4:4:1モデル周辺気流に関する風洞実験. 日本建築学会北陸支部研究報告集, 201-204.  https://www.aij.or.jp/paper/detail.html?productId=313933

[6] 野々村善民, 小林信行, 富永禎秀, 持田灯, 2003. 複合建物モデル周辺気流のCFDベンチマークテスト(その3) 複合建物を対象とした検証用モデルの風洞実験. 日本風工学会年次研究発表会梗概集, 83-84.  https://doi.org/10.14887/jaweam.2003.0.41.0

[7] 藤井邦雄, 浅見豊, 岩佐義輝, 深尾康三他, 1978. 新宿新都心地域の風−実測と風洞実験の比較−. 第5回構造物の耐風性に関するシンポジウム論文集, 91-98.

[8] 新宿副都心開発協議会・ビル風研究会, 1985. 新宿新都心の風−実測・実験・実態調査−.

[9] 黒谷靖雄, 清田誠良, 小林定教, 2001. 出雲地方の築地松が有する防風効果 その2. 日本建築学会大会学術講演梗概集 D-2, 745-746.  https://www.aij.or.jp/paper/detail.html?productId=241654

[10] 東京工芸大学, 風洞実験データベース「Database on Indoor / Outdoor Air Pollution」. http://www.wind.arch.t-kougei.ac.jp/info_center/pollution/pollution.html   http://www.wind.arch.t-kougei.ac.jp/info_center/pollution/pollution.html

[11] 産業技術総合研究所, 2011. DiMCFDモデル検証のための風洞実験.

[12] 産業技術総合研究所: https://unit.aist.go.jp/emtech-ri/ci/research_result/ db/01/db_01.html   https://unit.aist.go.jp/emri/ja/results/db/01/db_01.html

[13] 義江龍一郎, 野村佳祐, 堅田弘大, ジャンゴウイ, 2012.都市街区内の非等温流れ場における汚染物質拡散・熱拡散に関する風洞実験とLES. 第22回風工学シンポジウム論文集, 22, 61-66.   https://doi.org/10.14887/kazekosymp.22.0.61.0

[14] 立花卓巳, 田辺剛志, 義江龍一郎, 中山悟, 並木慎一, 宮下康一, 2014. 都市域における屋外実測と風洞実験による汚染物質拡散予測について. 第23回風工学シンポジウム, 31-36.   https://doi.org/10.14887/kazekosymp.23.0_31

[15] 立花卓巳, 宮下康一, 佐々木亮治, 義江龍一郎, 岸田岳士, 2017. 都市域における汚染物質拡散を対象とした風洞実験とLES解析の比較検討. 日本建築学会大会学術梗概集(中国), 41431.   https://www.aij.or.jp/paper/detail.html?productId=606904

[16] 日本建築学会, 2015. 建築物荷重指針・同解説.   http://www.aij.or.jp/eng/publish/index_ddonly.htm

[17] Ono H. et al., 2016. Data Storing Method for Large Eddy Simulation of Flow Around a Building. Proceedings of 11th OpenFOAM WorkShop.

[18] Okaze, T., Kikumoto, H., Ono, H., Imano, M., Ikegaya, N., Hasama, T., Nakao, K. Kishida, T., Tabata, Y., Yoshie, R., Tominaga, Y., 2017. Large-Eddy Simulation of Flow around Buildings: Validation and Sensitivity Analysis. 9th Asia-Pacific Conference on Wind Engineering (APCWE9), Auckland, New Zealand, December 3-7, 2017.   https://doi.org/10.17608/k6.auckland.5630887.v1

[19] 大風翼, 菊本英紀, 小野浩己, 今野雅, 池谷直樹, 挾間貴雅, 中尾圭佑, 岸田岳士, 田畑侑一, 中島慶悟, 義江龍一郎, 富永禎秀, 2020. LESによる1:1:2単体建物周辺流れのベンチマークテスト:各種計算条件が計算結果に及ぼす影響. 日本建築学会技術報告集, 26(62), 179-184.   https://doi.org/10.3130/aijt.26.179

[20] Yoshie, R., Mochida, A., Tominaga, Y., Kataoka, H., Harimoto, K., Nozu, T., Shirasawa, T., 2007. Cooperative project for CFD prediction of pedestrian wind environment in the Architectural Institute of Japan. Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, 95(9-11), 1551-1578.   http://dx.doi.org/10.1016/j.jweia.2007.02.023

[21] Tominaga, Y., Mochida, A., Yoshie, R., Kataoka, H., Nozu, T., Yoshikawa, M., Shirasawa, T., 2008. AIJ guidelines for practical applications of CFD to pedestrian wind environment around buildings. Journal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamics, 96(10-11), 1749-1761.   http://dx.doi.org/10.1016/j.jweia.2008.02.058