1. 本委員会活動の目的 近年,学生の文章力の低下や表現力の欠如,気質の変化,理数系離れの顕在化などを背景として,大学等の教育現場において,学 生の学習意欲を喚起する必要が生じており,様々な学習・教育の場面において,魅力ある教材の作成や効果的な教育システムの開発 等々の工夫が求められるようになっている。建築教育も例外ではなく,多様な教育機関において,多くの会員が,より良い建築教育 を目指して,独自の教材の作成や新しい教育システムの開発等々,特色ある建築教育に取り組んでいる。 しかしながら,これらの優れた建築教育への取り組みの多くが,それぞれの実践者と周りの近しい少数の関係者の間でのみしか認 知され,共有されておらず,我が国における建築教育全般の向上には,必ずしも寄与していないのが現実ではないだろうか。 そこで本小委員会では,各教育機関等で行われている建築教育について,特色ある取り組みの実践状況を把握し,そこで活用され ている教材の公開や共有化による有効活用を推進するべく検討を重ねている。
2.これまでの活動状況と経緯 数年前より本会では,専門教材のあり方検討小委員会において,学会として提供すべき教材のあり方を模索し,理事会に検討結果 を報告した。これと並行して,教材検討小委員会では,その具体的な教材事例を数種提案した。これについても新しい教材として順 次刊行・出版に向けて作業している状況である。それら成果の報告を兼ねた2003年度大会の研究集会では,参加者へアンケートを実 施した。集計結果から,その集会でテーマとした,特色ある教材,優れた取り組みの情報を公開・共有化することの有効性を確認し た。 これらの構想を具体化するために,2004年度から教材コンペ・共有化推進小委員会で審議した結果,特色ある取り組みの公開を継 続していくことが重要であるという認識から,2005年度の大会集会では次を計画・実施した。
3.教材に関するWebアンケートの結果とその後 本小委員会では,特色ある建築教育の実践状況を知るために2004年10〜11月にかけてWEBによるアンケートを実施した。209件の熱 心な回答を得た。ご多忙ななかアンケートにご協力頂いた会員には感謝している。集計結果を以下に示す。今後の授業等の参考にな るものと思うので,ぜひご一読いただきたい。
4.教材の共有化に向けて 上記Webアンケートの結果と教育現場が昨今おかれている状況の厳しさをふまえると,各校・各教員の独自性を尊重しつつ,効率的 に教育の質を確保することが求められる。そのためには,それぞれの取り組みや教材を公開し,共有することは有効な施策になろう。 こういった素材となるコンテンツを活用した上で,学習対象者などの所属機関における状況,教員個々の考え方によって,これらの素 材を活用し,オリジナリティあふれる教育を構築することができる。そのための方法や工夫は様々に生み出せる。手軽に情報が入手で きることで,オリジナリティの発揮により多くの時間を割くことも可能になる。一方で,求められる内容が各自の専門領域を超える場 合などは,ストーリー性をもった取り組みの紹介も参考になるであろう。 こういった教材の素材となるコンテンツを中心とした共有化を進める上では,教育業績の評価方法の検討を含め,提供する側・利用 する側の双方に有効な運用システムを構築する必要がある。2005年度の大会懇談会の議論もふまえ,諸外国における先行事例を参考に しながら,より積極的な会員の参加が望めるシステムとするべく,現在本小委員会では,教材・教育方法の事例公開に向けて,その意 義,条件整備等について,議論を重ねているところである。 引き続き会員諸氏のご意見やコメント等をいただければ幸いである。