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市民のための耐震工学講座

8. 鉄骨造


鉄骨造の構造

 鉄骨造で建物を建てる場合はラーメン構造が多く使われます。鉄骨ラーメン構造は,図40のように構成されています。また,地震力に効率よく耐えるためにすじかいや耐震壁を入れることもあります。


図40 鉄骨ラーメン構造13)


図41 さまざまな形の鉄骨13)


 鉄骨造とは「鉄で出来た建物」ですが,より正確に言うと「鋼(はがね)で出来た建物」です。鋼とは純粋な鉄に炭素を主とする「合金元素」がごくわずか含まれたもので,身の回りで見かける「鉄」とはほとんどが「鋼」のことです。含まれる炭素などの量を変えると,鋼の性質は様々に変化します。例えば,炭素の互が比較的多い「硬鋼」は比較的強いのですが,伸びがあまりないので工具などに使われます。また,炭素の量が比較的少ない「極軟鋼」はあまり強くないのですが,伸びが比較的あるので鉄線などに使われます。

 鉄骨造の建物には,炭素の量が中程度でほどよい強さとほどよい伸びを持つ鋼が使われます。この鋼でつくった鉄骨を組み立てて建物を建てます。しかし,一ロに鉄骨と言っても図41に示すように様々な形のものがあり,用途によって使い分けます。それらの部材をつなぎ合わせる方法は,現在は主に高力ボルトと溶接が使われます。高カボルトは写真21のようなもので,ボルトで締め合わせた部材同士の摩擦で部材が動かないようにします。溶接は写真21のように,溶かした金属をつなぎ目に詰めて二つの部材を一体化させる方法で,適切に溶接した部分はその周りの部分よりも強いことが分かっています。


写真21 高力ボルト接合28)


写真22 溶接接合のつなぎ目29)

 鉄骨造は地震力を,床面,柱,はり,すじかいで受け持って,鉄骨柱の柱脚の部分を通って基礎に,そして杭,地盤へと伝えます。

鉄骨造のこわれ方

 鉄骨造の部材のこわれ方のひとつに「座屈」があります。細長いものか両端から圧縮されていって,耐えきれなくなると急に弓なりになってこわれるのがそれです。座屈には図42の左上のような「オイラー座屈」,下のような「横座屈」そして右上のような「局部座屈」があります。オイラー座屈を防ぐには柱をあまり細長くしないことが大事です。横座屈を防ぐには,はりをあまり長くしない,はりが横方向に動かないように固定する,などのことが必要です。

 「材料破壊」と呼ばれるこわれ方もあります。まず,鋼のねばりが生かされてある程度材料がのびてからこわれる「延性破壊」です。また,鋼のねばりがいかされずに脆(もろ)くこわれてしまう「脆性破壊」(写真23)もあります。建物が,材料破壊を起こすと地震などによる力を伝える仕組みが,完全にバラバラになってしまうので注意が必要です。また,材料破壊には,部材同士のつなぎ目がこわれる場合と,部材自身がこわれる場合とがあります。

 鉄骨造に限りませんが,構造的には一般論として,延性破壊が望ましく,脆性破壊は歓迎されません。


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