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市民のための耐震工学講座

4. 地盤について


地盤とは

 地盤とは,地球の表面から深さおよそ100mまでの部分で,建物を建てる場合に関係してきます。日本のたいていの所では地盤は図7のように主に2つの層からなっています。約1万年前以降にできた沖積層(ちゅうせきそう)と呼ぱれる部分と,それ以前にできた洪積層(こうせきそう)と呼ぱれる部分です。この沖積層と洪積層はできた時代などが違うためにその性質にも違いがあります。

 図7にある地層を構成している砂などの粒は小さい方から,粘土,シルト,砂,れきの順です。非常に細かい粘土から,cmの大きさのあるれきまで,地層は色々な大きさの粒からなっているのです。また,「ここの地盤はどうですか」と使われるように,地盤という言葉は建物が上に建つある範囲の場所を指す場合にも使われます。


図7 地層構成の一部分13)

 図8は,東京の山手から下町までの地盤の断面です。全体的に上がり下がりが激しいのが分かります。また,下町の方の地盤は砂で構成されていることが分かります。


図8 上野付近の台地と低地の断面図14)

 図9は,神戸の地盤の断面です。海の方に向かってなだらかに下っているのが見て取れます。また,平野部分の地盤は,ほとんどが砂で構成されていることも分かります。


図9 神戸付近の地層の断面図5)



地盤と揺れ

 地震が発生するとそのエネルギーは地震波となり,それが,地中を通って地表に達すると私達が感じる「揺れ」が起こります。地震波は地中を通る間に性質の異なる部分の境目に来ると反射したり屈折したり(図10)大きくなったり小さくなったりします。つまり地震波は地中を通ってくる間にかなり性質が変わるのです。また,建物の建っている地盤の違いによって地震の揺れ方も違ってきます。これらのことにより,ほとんど離れていない場所においても揺れ方が,全く違い,被害に差が出るということが見られます(図11)。


図10 地震波の伝ぱ経路13)


図11 地盤による揺れの違い15)

 この地震の揺れの性質は「振幅」と「周期」に分けて考えることが出来ます。「振幅」は地震の揺れの大きさのことで,「今の地震は大きかったね」という場合はこの振幅が大きかったということです。また「周期」とは,時計の振り子のように地震の揺れがいって戻ってという往復するまでにかかる時間のことです。「ガタガタ揺れる地震」というと比較的周期が短く,「ユーサユーサと揺れる地震」というと比較的周期が長いわけです。この地震の振幅と周期は前に述べたように地盤によって左右されます。沖積層のような「やわらかい」地盤では振幅が大きく周期が長くなる傾向が,洪積層のような「かたい」地盤では振幅が小さく周期が短くなる傾向があります。このような地盤が持つ揺れの周期の特性を特に「卓越周期」と呼びます。

 この地盤によって左右される地震の「振幅」と「卓越周期」は建物の揺れと重要な関係がありますが,これについては「建物と地盤」で説明します。



地盤の上に建てる

 地盤のうち,沖積層は比較的新しく固くしまっていないので,それほど強くありません。私達は普段この沖積層の上に建物を建てています。沖積層では中高層ビルのような重い建物を支え切れません。そのため,洪積層やそれより深い所にある固い地盤まで建物の力を伝えて支える必要があります。この建物を支える地盤を「支持層」と呼ぴます。

 では,建物を支える方法を見てみます(図12)。地表から数メートルに固くて頑丈な地盤がある場合は,その上に建物の基礎を直接つくる「直接基礎」を使います。固くて頑丈な地盤が深い所にしかない場合は,そこまで杭を打った上に建物の基礎をつくる「杭基礎」を使います。


図12 建物を支える基礎の例13)

 また,建物の建つ地盤には注意が必要です。まず,砂を使った埋立地,昔は河川であった所,地下水位が高い地盤などでは「液状化」の危険性があります。液状化では,地下水で満たされた砂層の地盤に地震の揺れが来ると,今まで結びついていた砂どうしが切り放されて全体的に泥水のようになります(図13)。この上に建物があると,地盤がドロドロになるので建物は倒れたり傾いたり,または周辺の地盤が沈下したりします。また,水風船を針で突いて穴を開けると水が出てくるように,液状化で出来た泥水が地表の弱い部分から吹き出す「噴砂」も起こります(写真10)。


図13 液状化のメカニズム13)


写真10 液状化による噴砂5)

 傾斜地や造成地の地盤も注意が必要です。傾斜地では地盤が地震の力で崩れることがあります。また造成地では,土を押さえている石や鉄筋コンクリートの擁壁(図14)が地震でこわれる危険性がありますし,ひびが入るとその後の地震でこわれる危険性が出てくるので,地震後には点検が必要です。


図14 擁壁の例13)


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