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市民のための耐震工学講座

11. 地盤の被害


 地盤の被害は,地表面に出ていれば地震発生と同時に発見されます。しかし,普段は目に付かない基礎や杭の被害の対策は遅れがちです。それは,所有者や管理者は目に見える部分の被害把握を優先しがちなので,基礎や杭の被害の発見は遅れるのです。基礎や杭は建物を支える重要な部分ですから,早めにその被害状況をつかむ必要があります。

地盤の被害

崖地,斜面の被害

 写真24はもともとのテラス状台地を造成した所です。土砂崩れで崩壊した斜面の上に,基礎の杭が露出した鉄筋コンクリート建物が残っています。ここで崩れた土砂は川沿いに流下して,下流の住宅を押しつぶして大きな被害がでました。


写真24 崩壊した台地5)

自然台地の被害

 写真25では,自然台地の斜面に数十本の亀裂が入っています。これによって擁壁や住宅の壁に亀裂が入っています。


写真25 亀裂が入った自然台地23)

盛土造成地の被害

 写真26では,ひな壇型に造成した住宅地が低い方へ移動しようとして出てきたために,道路が曲がってしまっています。このような造成地の多くで地面に多くの亀裂が見られたのは,今回の宅地地盤被害で特徴的です。これらのことは,宅地造成時の地震に対する設計上の要求性能を検討する際に考慮される必要があります。


写真26 造成地の移動で曲がった道路23)

擁壁(ようへき)の被害

 写真27は個人住宅用につくられた擁壁の被害例です。盛り土に作用した地震の力を擁壁が支えきれなくててこわれました。このような擁壁の被害のために住宅が倒れてしまった被害もありました。また,写真27のように鉄筋コンクリート造の多壁の亀裂も多く見られました。すぐに危険であるというわけではありませんが,後々のことを考えますと早めに補修が必要です。


写真27 こわれた個人宅地の擁壁23)

液状化による被害

 写真28では戸建住宅地の道路で液状化による噴砂が,起こっています。写真29では,液状化で建物の周りの地盤が沈下したために建物が浮き上がった形になっています。その他にも,液状化によって同じ建物でも沈下に差が出て傾いている不同沈下の被害が見られました。また,このような液状化によってガスなどの配管類にも被害が出ています。このような中で,液状化に対して地盤を改良していた高層住宅の周辺では噴砂は起こりませんでした。このことから,液状化対策が今回のような地震においても有効であることが分かりました。


写真28 住宅地道路での噴砂23)


写真29 建物周辺での地盤沈下23)

基礎・杭の被害

直接基礎の被害

 直接基礎の建物の典型的な被害は,写真30に見られるような不同沈下です。原因は支持層である地盤が液状化したためですが,建物の重さが片寄っているので建物内でも沈下量に差が出ました。直接基礎の被害では,墨礎や建物自体の被害が軽い場合が多く見られます。そうなると建物自体は使えるので,使い勝手や住みやすさへの影響を考えた場合にどこまで不同沈下を許容するのかが問題となります。


写真30 直接基礎の被害による不同沈下23)

杭の被害

 写真31は液状化した地盤が動いたために杭に被害が出た例です。杭の被害は地面の下なので見つけにくいこともあります。しかし,建物の傾きなどで杭の被害が推測される場合には早めに対策をとる必要があります。


写真31 こわれたコンクリート系の杭23)


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